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昔の思い出6

[334]  もね  2008-05-02投稿
父の唯一の男兄弟である叔父は遠洋漁業の船乗りであった為、5人兄弟の中でも遅くまで独り身であった。
早くに家を出た父に代わって祖父母の世話をしながら暮らしていた。
私は特別叔父に可愛がられていて、物心付いた頃には父の故郷に行くと父より叔父の傍らにいる事の方が多かった。
クーラーなどまだ一般的でない頃だから、夏の昼下がりのうだる暑さに、叔父が私を裏山の沢へ連れて行った事もあった。
駅から祖父母の家までの細い砂利道にはその先があった。
山中の荒れ果てた畑を通り抜けると、道の砂利が見えない程草が生い茂り、とうとう藪の中に消えているのであった。
叔父はその藪を力強く掻き分け、小さな私を注意深く通してくれた。
その藪の奥の奥、暗い木々に覆われた形で砂地に染み込む美しい水があった。
「おめも入ってみらい」
先に靴を脱いで沢に入って叔父は言った。
「ひゃ!冷たーい」
足が痺れる程の冷たさと、川底の粘土の様なとろとろした肌触りの砂が気持ち良く、意味もなく叔父とけらけら笑っていた。

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