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朝野と夢野──本来の自分──2

[381]  京野一芽  2008-05-05投稿
 もう寝たのか。縞々(しましま)のベッドに潜り込んだ途端にぴくりとも動かない。しばらく様子を見ているとたまにまぶたの裏で目がゴロリと動く。寝たらしい。きっとその眠りのうちで、端から端までの悪いことはかなぐり捨てて、良いことばかりを見ているのだろう。朝野くんが眠るとぼくの意識ははっきりとしてくる。ぼくは、にやけ顔で寝入る朝野くんを横目に、毎日自らに課している仕事に励もう。その仕事は朝野くんの仕事のように汗を流すことはしないけど、その代わりしーんとした暗がりで、さめざめと泣いて涙を流すのだ。朝野くんにも世間にもどうもこういった仕事を軽んじる傾向があるけれど、ぼくはとても誇りに思っている。まあ、ときに朝野くんの見ている夢が少しばかり気になったりもするのだけれど。

 ははは。B子ちゃん、それはないだろう。彼よりはだんご虫にお供します、だなんて。まさかそんな。「え、だってあのひと、だんご虫に似てるじゃん・・・・・・それで。あはは」冗談はちょっときついけど、B子ちゃんの笑顔は屈託なくてまぶしい。見ていると視界がかすむくらいだ。たとえ瑕疵(かし)があったとして、それがなんだ、苦もなくちゃらだ。つまり、おべんちゃらなんだ・・・・・・って、おべんちゃらなんて言葉、おれは知らないぞ。聞いたことはあるけれども意味は知らない。

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