凛の光 [冬]
「いゃ〜っ……平和だ。
……て言うか暇すぎ」
今にも雪が降りだしそうな冬空の下、明石健介はこぼしていた。
悪友達はそろってバイト。
彼自身は車やバイクを持てる様な身分ではないプチ貧乏。
それに加えて、今の時点では彼女もいないとあっては前述のセリフも仕方がないと言える。
「あら? 明石さん…でしたわね。 お久しぶりです、城崎です」
「え、 ……凛さんですよね?妹さんじゃなくて」
思わず確認してしまった健介だが、秋ごろの恥ずかしい失敗が頭をよぎったため、無理からぬ事である。
「ウフフ、妹の涼をご存じでしたか。 ところで明石さんは今日、何かご予定はおありですか?」
「いーえ、全然……暇すぎて脳が溶けそうっスよ」
「それなら、これから色んな流派の交流試合がありますので、御覧になりませんか?」
「へぇ、何だか面白そう。……喜んでお供します!」
そんな訳で、健介は城崎凛の後にくっついて試合会場へと足を運ぶ事になった。
「それでは、私は支度がありますので失礼します」
「支度って、凛さんも出場するんスか?」
「ええ、本日急にお話がきて。 久々に白刃相手でやり応えありますのよ」
「うーん、……良くわからないけど、とにかく応援します!」
あまりにもサラッと言われたせいか、『白刃』の意味が判っていない健介であった。
ドーン!、と太鼓が打ち鳴らされると模範演技が開始される。
(思ったより観客は少ないなぁ。 でも、結構面白いかも知んない)
プログラムが進むにつれ、見た事もない「砲術」だの「忍術」等の派手なパフォーマンスが次々に披露され、いわば大道芸的な面白さがあった。
「何だ、君も来てたのか」
不意に肩をぽん、と叩かれ健介が振り向くと木村猛と城崎涼が笑顔で立っていた。
「はい。 凛さんに誘われて来たんですよ」
「ふ〜ん、……お姉ちゃんにねェ…。 うふふっ、腰抜かさないでね♪」
「どーいう事?」
それには答えず、涼は悪戯っ子の笑顔のまま選手控え室に消えていった。
「涼が『風』なら、凛さんはさしずめ『光』って事だよ」
木村猛の謎めいた言い回しに、健介はますます訳がわからなくなっていた。
つづく
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