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凛の光 [冬]その二

[648]  朝倉令  2006-05-08投稿


プログラムの最後は空手奪刀(くうしゅだっとう)とのみ記されており、演武者の名前は記載されていなかった。



「ここだけ名前が消されてますけど?……」


「あ、これはですね、本来出場予定だった方が急病で出られなくなりまして。」
「それで印刷がパンフレットの配布に間に合わなかったんですよ」


「ああ、なる程」



物腰の柔らかな受け付けの男性から説明を受け、明石健介は納得した。



(奪刀って……真剣か!)


『白刃を相手に』と凛が言っていた意味をようやく悟った健介である。



デモンストレーションも兼ねて、真剣である事をアピールするために巻きワラ切りが行なわれた。



「キエェ――イッ!!」


鋭い気合いと共に銀光が閃く。


一拍置いて、巻きワラの上半分がゆっくりと滑り落ちてゆく。


思わず寒気を感じる程の切れ味であった。



後ろに控えている城崎凛は、普段と変わらぬ様子だ。




やがてドーン!、という太鼓の音を合図に最後の模範演技が始まった。


刀を正眼に構えた相手役がすり足で間を詰めていく。

凛は背筋を真っすぐに伸ばしたまま、佇立している。


ついに、刃の届く間合いに入った相手。

「キエェーッ!」

烈帛の気合いをあげ、刀を振りかぶった。


「えいっ!!」



まさに電光の早業で飛び込んだ凛。


相手役の視界が袖に隠れる一瞬をついた凛は、当て身を入れると同時に柄中を握り、アッサリと刀を奪い取ってしまった。



(すげーっ!…… 何て早さだ)




観客の拍手が鳴り響く中、健介は木村猛の言葉を思いだしていた。


《涼が風なら、凛さんはさしずめ『光』って事だよ》


城崎凛は丁寧に一礼した後、拍手を背に去ってゆく。





最終話へつづく

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