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りくるさん

[660]  ゆきんくす  2008-05-12投稿
子供の頃には見えていた。それが当たり前だったから…

話し相手にもなっていた。返事もしないそいつだったから、会話は成立していたかどうかは不明だが…。

小学校の頃、お歌がうまく歌えない日があった。
りくるさんは目の前で綺麗に歌ってくれた。
「りくるさんみたいになりたい」って言った。

中学校の頃、バスケの試合で惨敗した時があった。
りくるさんは身軽にジャンプして見せた。
「りくるさんになりたい」って言った。

親にも紹介したことはあった。
親に叱られた。
友達にも紹介したことはあった。
友達にいじめられた。
りくるさんは笑って頭を撫でてくれた。
「もう僕はいやだ」って言った。

ある日りくるさんが「君と一緒に遊ぶためのものが欲しい」と言った。

ボールを渡しても手がないからうまくさわれない。
かけっこしようとしても足がないからうまく走れない。

「しばらく慣れるまで貸してほしい」

意味が分からないが僕は「うん」って言った。

だから僕が今はりくるさん。

君のために慰めてあげるね。

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