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奇妙な時空−第12話

[310]  あきは  2008-05-13投稿
 人によっては、1番辛いのは『痛み』という人と1番辛いのは『痒み』という人に分かれる。
今日は『痒み』の話をしよう。

ある人は慢性的な皮膚病で、常日頃『痒み』を感じていた。
想像できるだろうか?
『痒み』で目が覚める辛さを。
掻いたとしても治まらない『痒み』の存在を。
血が出るほどに掻きむしり、なおもまだ『痒い』

そんな症状に侵された人がいる。それは特に両手にあった。
毎日毎夜『痒み』に蝕まれ気も狂わんばかり。
血まみれの両手を見た両親は自殺未遂かと勘ぐった。
薬を飲んでも、薬を塗っても、決して癒されなかった。
掻きむしらないように包帯を巻いても、いつの間にか外して掻きむしり、
何処かに縛り付けても結果は変わらなかった。

そうなると、今度はその根源が酷く憎らしいモノになった。

そうして、とうとう今日やってやったんだ。
根源である両手を切り落としてやった。これでやっと『痒み』とおさらばだ!



あぁ、知らなかった。
人間って奴は、失くなったモノも覚えているんだね。
幻肢というヤツさ、まだ両手が痒くて仕方が無いのに、掻くにも掻けないんだよ…………。

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