一週間 五章 死体 2
「悠子の時と…同じだ…」
牛嶋はさぞかし驚いたことだろう。しかし、既に悠子の有様を見ている祐輔は、大林教授の死体を前にしても、概ね冷静でいられた。
机の上には、ノートパソコン用の電源コードだけが、コンセントに差し込まれた状態で置かれている。
「先を越されたか…牛嶋の奴…」
研究室の教授の部屋にはノートパソコンは無かった。研究で出歩く時は必ず持ち歩くだろうから情報がぎっしり詰まってるはずだ。そう読んでいた祐輔は、教授がいなかった時はそのパソコンを拝借しょうと考えていた。
しかし、牛嶋が持ち去って目の前にはコードしかない。
仕方無く祐輔は、他に手掛かりはないかと死臭の漂う側で机の引出しを物色し始めた。悠子の死の経緯を知りたくて必死だったのだ。
しばらくして、椅子の脚の下に開いたままの状態でケータイが転がっている。手を伸ばした祐輔の鼻先が、交差して重ねている教授の足を掠めた。
「うっ!」
強烈な腐敗臭に、祐輔は堪らず息を止めた。
なんとかケータイを拾い上げると、祐輔は真っ黒になったディスプレイに不安を抱きながらも、電源ボタンを強く押した。だが、長押しするつもりで触れた親指をすぐに離す。
「良かった…省エネモードになっていただけだ!」
明るくなった画面には、待受ではなく、メールの下書き機能部に文字が映し出されている。
「どうして…村の名が…」
そこには、祐輔が生まれ育った故郷の村名が打ち込まれていた。
「もしかしたら…教授は電話で教えてもらったんじゃ…そして忘れまいと慌てて下書きにメモった…だとすると、相手は…」
すぐに着信履歴を調べると、最新履歴の欄に悠子の名が記されている。
「やっぱり…」
祐輔は、村の名を知る悠子だったらと考えたのだが、それは同時に事件の闇が村にある事を指し示していた。
「村に帰るしかないか…春樹さんにも会いたいし…」
月明りの照らす静かな夜の峠道で、故郷へと急ぐ祐輔の車のエンジン音だけが鳴り響いていた。
しかし…祐輔は重大な見落としをしていた。
着信のあった日付が、大林教授が失踪した、一週間前ではないことを。
そして、悠子の死んだ時間と、さほど差の無いことを…。
牛嶋はさぞかし驚いたことだろう。しかし、既に悠子の有様を見ている祐輔は、大林教授の死体を前にしても、概ね冷静でいられた。
机の上には、ノートパソコン用の電源コードだけが、コンセントに差し込まれた状態で置かれている。
「先を越されたか…牛嶋の奴…」
研究室の教授の部屋にはノートパソコンは無かった。研究で出歩く時は必ず持ち歩くだろうから情報がぎっしり詰まってるはずだ。そう読んでいた祐輔は、教授がいなかった時はそのパソコンを拝借しょうと考えていた。
しかし、牛嶋が持ち去って目の前にはコードしかない。
仕方無く祐輔は、他に手掛かりはないかと死臭の漂う側で机の引出しを物色し始めた。悠子の死の経緯を知りたくて必死だったのだ。
しばらくして、椅子の脚の下に開いたままの状態でケータイが転がっている。手を伸ばした祐輔の鼻先が、交差して重ねている教授の足を掠めた。
「うっ!」
強烈な腐敗臭に、祐輔は堪らず息を止めた。
なんとかケータイを拾い上げると、祐輔は真っ黒になったディスプレイに不安を抱きながらも、電源ボタンを強く押した。だが、長押しするつもりで触れた親指をすぐに離す。
「良かった…省エネモードになっていただけだ!」
明るくなった画面には、待受ではなく、メールの下書き機能部に文字が映し出されている。
「どうして…村の名が…」
そこには、祐輔が生まれ育った故郷の村名が打ち込まれていた。
「もしかしたら…教授は電話で教えてもらったんじゃ…そして忘れまいと慌てて下書きにメモった…だとすると、相手は…」
すぐに着信履歴を調べると、最新履歴の欄に悠子の名が記されている。
「やっぱり…」
祐輔は、村の名を知る悠子だったらと考えたのだが、それは同時に事件の闇が村にある事を指し示していた。
「村に帰るしかないか…春樹さんにも会いたいし…」
月明りの照らす静かな夜の峠道で、故郷へと急ぐ祐輔の車のエンジン音だけが鳴り響いていた。
しかし…祐輔は重大な見落としをしていた。
着信のあった日付が、大林教授が失踪した、一週間前ではないことを。
そして、悠子の死んだ時間と、さほど差の無いことを…。
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