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凛の光 [再び、春]

[684]  朝倉令  2006-05-09投稿


春のぽかぽか陽気の中、明石健介は城崎凛に誘われて、ツーリングに出掛けるところであった。



「ところで、何で俺を誘ってくれたんスか?」


「え?、お友達の方から、明石さんは絶叫マシンがお好きとうかがったものですから……」



「マジ?…………」



健介は、その時点でイヤ〜な予感がしていたが、男らしく覚悟を決めた。



ドルン!ドルン!と重低音が腹に響く。



「これ、何CCなんスか?」

「え?、900CCよ」


「ウソ…」


ドルルル……クワァンッ!

クゥオオオォ――ッ!!


「うわああああぁーっ!」


いきなりカタパルトから飛び出すような爆烈加速に、健介は絶叫していた。






「はい、お疲れさま。コーヒーでもどうぞ。
ウフフッ、お友達の木島さん達って、実は大嘘つきなのね」


「ふぁ〜い… ろうもありあとれふ」



強烈な加速と耳をつんざく爆音に、健介は完全にグロッキー状態。


ろれつさえ怪しくなっていた。


実は、健介は遊園地のジェットコースターが『大の苦手』…なのである。






「大丈夫? そろそろ帰らないと真っ暗になってしまいますけど…」


「もう平気っスよ。
……ただ、帰り道は250キロ以下でたのんます」


「あら、叫んでいた割に良く見てるわね」


「いや、あれは……忘れてくれない?」


「まぁ、アハハハ‥」



健介の返事に、凛は爆笑していた。






「あの、今日はお付き合い頂きまして、ありがとうございます」


「いーえ、どう致しまして。 ……お陰で絶叫マシンが大得意になりそうだしね」


「あら、ウフフッ…でも男性に恥をかかせたお詫びは、私なりにさせて頂きましてよ?」


「へ?、どう言う…」


「何だかあなたって、とっても可愛いんですもの」



その時、夕焼けに伸びていた二つの影が重なった。






(…生きてて、良かった)


やわらかなくちびるの感触を味わいながら、明石健介は感動に包まれていた。






おわり

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