武士になりたくて五
戦。
これが戦なんだ。
憧れていた華やかさなど微塵もない。あるのは血の匂いと燃える炎。
これが戦。
虎之助はその場から立ち上がり燃え盛る村を見て驚愕した。
二手に別れ、一つの軍勢は山に向かい更にもう一つの軍勢は山を迂回しながら進軍して来る沢山の人影の波…。
「小一郎!動くなよ」
虎之助は咄嗟にその場にしゃがみ小一郎に向かって叫んだ!
此処にいたら、見つかってしまう。虎之助は小一郎の手を掴み再びはやる気持ちを抑え、歩き始めた。
小一郎が不安気に虎之助を見やり、掠れた声で囁いた。
「どうしたの?」
虎之助は小一郎の小さな手を強く握る。
か弱いその手に励まされているのは自分の方かもしれない。
鉛のような心臓。虎之助は見えざる追っ手が迫るのを感じていた。
「悪い奴らがオラ達を追って来る。歩けるか、小一郎」
小一郎は無言で頷いた。
虎之助は空を見上げ、早春の太陽が二人を照らし出すのを肌で受け止めていた。
普段なら喜ぶべき陽射しも、今は自分達を浮き彫りにしてしまう。内心の焦りが指先から伝わったのか、小一郎が手を振りほどいた。
「兄ちゃん!オラ、走るよ!」
これが戦なんだ。
憧れていた華やかさなど微塵もない。あるのは血の匂いと燃える炎。
これが戦。
虎之助はその場から立ち上がり燃え盛る村を見て驚愕した。
二手に別れ、一つの軍勢は山に向かい更にもう一つの軍勢は山を迂回しながら進軍して来る沢山の人影の波…。
「小一郎!動くなよ」
虎之助は咄嗟にその場にしゃがみ小一郎に向かって叫んだ!
此処にいたら、見つかってしまう。虎之助は小一郎の手を掴み再びはやる気持ちを抑え、歩き始めた。
小一郎が不安気に虎之助を見やり、掠れた声で囁いた。
「どうしたの?」
虎之助は小一郎の小さな手を強く握る。
か弱いその手に励まされているのは自分の方かもしれない。
鉛のような心臓。虎之助は見えざる追っ手が迫るのを感じていた。
「悪い奴らがオラ達を追って来る。歩けるか、小一郎」
小一郎は無言で頷いた。
虎之助は空を見上げ、早春の太陽が二人を照らし出すのを肌で受け止めていた。
普段なら喜ぶべき陽射しも、今は自分達を浮き彫りにしてしまう。内心の焦りが指先から伝わったのか、小一郎が手を振りほどいた。
「兄ちゃん!オラ、走るよ!」
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