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肉を食べてはいけない村?

[774]  レオン  2008-05-16投稿
今から80年以上も前の事。

その小さな村は今年の夏の台風で川が氾濫して、田んぼの稲が全滅した。

人々は、嘆き悲しんだ。

それでも人々には、無事に残った畑があった。

米には負けるが、ヒエやアワの雑穀や南瓜や人参の野菜が育てば、餓える事はない。

しかし、不幸な事に今年は"やませ"が吹いて例年に無い程寒い日が続いたので、畑の作物は育つ事が無かった。

人々は困り果てた。

しばらくの間は、蓄えてあった物を少しずつ食べた。
やがてそれが無くなると、山へ行って、山菜や木の実を採って食べた。

冬が来ると、それも無くなり、人々に飢えが襲った。

山には熊や兎や狸がいたが、この村の習わしで、肉を口にする事は許されていなかった。

人々は習わしに従い、肉を口にしようとはしなかった。

そのうちに、飢え死にする者が出てきた。

抵抗力も無かったので、流行病が村に広がり、村の半分が死んでいった。

このままでは、村が全滅してしまうと、一人の男が立ち上がり、山へ狩りに出掛けた。

何でもいい。
何か口にして力をつけなければ…。

しばらく歩いたが、獣達がいない。

男はガックリと肩を落し、村へ帰る事にした。

暗くなった山道を歩いていると、後ろからガサガサと何かがつけてきている音がする。

男は獣だと思い、タイミングを見計らって鉄砲を放った。

どぉ〜〜〜〜ん

男が獲物を見ると、それは熊でも兎でも狸でもなかった。
それは、体長1メートル程の人の形をした気味の悪い生き物だった。

男はとりあえず、それを抱えて山を降りた。

村へ帰り、それを村人に見せると人々は気味悪がった。

そこへ一人の老人がやってきて、こう叫んだ。

「生臭様じゃ〜。生臭様じゃ。恐ろしや〜恐ろしや〜」

何か分らないが、老人の慌て振りは半端ではなく、人々はそれを恐れた。

次の日の朝。

あの男が、何者かに内臓を食い散らかされて、死んでいた。
男の家の周りには、あの人の形をした生き物と同じぐらいの足跡が幾度も残っていた。

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