一週間 最終章 クチズサミ 5
「祐輔くん…」
春樹は、愛する人を無くした祐輔の気持ちが痛いほど分かった。
「一週間も何も口にしていなかったんだ…空腹と死の恐怖で、錯乱したんだろうね…けど、ショックを受けて立ち尽くすお義母さんに気付いた時、我に返ったポリトはお義母さんを抱き締めて…『取り返しのつかない事をしてしまった…ごめんよ、ごめんよ』と何度も謝ったそうだよ」
祐輔は何も言い返せず、黙って聞き続けた。
「その後…見張りから報告を受けた父親が、猟銃を持って駆け付けた時にはポリトの姿は消えていた…遺体の側で血の海に浸りながら、涙ひとつ流さず母親を見つめるお義母さんを残して…」
春樹は突然、祐輔を見据えた。
「祐輔くん…お義母さんがこの事件を思い出したのは二十年前の、娘…つまり私の、妻の早苗の死が切っ掛けだったんだ…君は本当に何も覚えてないのか!」
祐輔は春樹の言っている意味が理解できなかった。
「切っ掛けって…早苗さんは心臓発作を起して…それで…なんで俺が…」
「違うんだよ、早苗は…心臓を喰われて死んだんだ」
「!…それって」
「裏山の…洞窟の祠の前で倒れていた」
「洞窟?…まさか」
「君はさっき、そんな洞窟が有るのかと言ったけど、君と悠子は…その洞窟の、早苗の遺体の側で泣いていたんだよ」
「そんな…何も覚えて…ない」
春樹は興奮して、祐輔に責める様な問い詰め方をしてしまったと後悔した。
「すまない…だが少なくとも…悠子は覚えていた」
春樹はすっくと立ち上がった。
「祐輔くん!…洞窟に行ってみないかね?…何か思い出すかもしれない」
「今からですか?…あ…はい!」
二人は懐中電灯を持って裏山の雑木林へと入り、十分ほど歩いて洞窟に着いた。
牢屋にするために、入口に嵌め込んであった木の枠は、朽ちたのか既に無くなっていた。
奥に進むと春樹の言う通り祠があって、祐輔が懐中電灯で地面を照らすと、少しだけ黒く、赤紫に変色した血痕が浮かび上がった。
「あれ?…この血痕、二十年前のにしては新しい様な…」
「ここに…早苗と同じ姿で…悠子は倒れていたんだ…」
血痕を見つめる春樹の横顔を、祐輔は目を見開き凝視した。
春樹は、愛する人を無くした祐輔の気持ちが痛いほど分かった。
「一週間も何も口にしていなかったんだ…空腹と死の恐怖で、錯乱したんだろうね…けど、ショックを受けて立ち尽くすお義母さんに気付いた時、我に返ったポリトはお義母さんを抱き締めて…『取り返しのつかない事をしてしまった…ごめんよ、ごめんよ』と何度も謝ったそうだよ」
祐輔は何も言い返せず、黙って聞き続けた。
「その後…見張りから報告を受けた父親が、猟銃を持って駆け付けた時にはポリトの姿は消えていた…遺体の側で血の海に浸りながら、涙ひとつ流さず母親を見つめるお義母さんを残して…」
春樹は突然、祐輔を見据えた。
「祐輔くん…お義母さんがこの事件を思い出したのは二十年前の、娘…つまり私の、妻の早苗の死が切っ掛けだったんだ…君は本当に何も覚えてないのか!」
祐輔は春樹の言っている意味が理解できなかった。
「切っ掛けって…早苗さんは心臓発作を起して…それで…なんで俺が…」
「違うんだよ、早苗は…心臓を喰われて死んだんだ」
「!…それって」
「裏山の…洞窟の祠の前で倒れていた」
「洞窟?…まさか」
「君はさっき、そんな洞窟が有るのかと言ったけど、君と悠子は…その洞窟の、早苗の遺体の側で泣いていたんだよ」
「そんな…何も覚えて…ない」
春樹は興奮して、祐輔に責める様な問い詰め方をしてしまったと後悔した。
「すまない…だが少なくとも…悠子は覚えていた」
春樹はすっくと立ち上がった。
「祐輔くん!…洞窟に行ってみないかね?…何か思い出すかもしれない」
「今からですか?…あ…はい!」
二人は懐中電灯を持って裏山の雑木林へと入り、十分ほど歩いて洞窟に着いた。
牢屋にするために、入口に嵌め込んであった木の枠は、朽ちたのか既に無くなっていた。
奥に進むと春樹の言う通り祠があって、祐輔が懐中電灯で地面を照らすと、少しだけ黒く、赤紫に変色した血痕が浮かび上がった。
「あれ?…この血痕、二十年前のにしては新しい様な…」
「ここに…早苗と同じ姿で…悠子は倒れていたんだ…」
血痕を見つめる春樹の横顔を、祐輔は目を見開き凝視した。
感想
- 10044: 一週間ご飯ぬいたくらいで人の肉食べるとこまではいかないし、力がなくなっている人間が元気な人に食いつくってのも無理があるんじゃない?出だし良かっただけに残念な展開。 [2011-01-16]
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