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Mind Adventure 24

[417]  籬 規那  2008-05-22投稿

実際、この程度の拘束など、妖需にとって、無きにしもあらずだった。


靴の窪みに指を差し込み、軽い衝撃を加える。

靴裏に仕込まれていた鑢が飛び出し、カラン、と音を立てて床に転がった。


それを使い、まず腕を縛るロープを切る。
同じ要領で、鉄柵を被っている金網も切断した。



この場所が、古い建物でよかった。

祖母に教わった開錠術は、元はもっとしっかりした物だったのかも知れないが、教えた人間が世紀末的な不器用だったせいか、殆ど力業なのだ。



建物が古いと、もう一つ便利によい事がある。

それは、武器の調達。


先程用いた鑢を、壁のひび割れに慎重に差し込んだ。

下に落ちる小石の音を、床に敷いた靴下で緩和する。


両手でなんとか持てる程度の小石を、靴下に詰めて軽く振ってみた。



お粗末ではあるが、なんとか使えそうだ。

ブラック・ジャック。


2000年以上前の空白の時代よりもっと昔に、とある死刑衆が、脱獄に用いた、武器だという。



きっと時代は大きく変わったのに、今も残る先人の智恵。

変わらないもの。

変わらない想い。

そして、歴史が埋もれた虚無。


暢気に不思議さを感じて、数秒放心したあと、頭を振って切り替えた。







ほぼ同時刻。

同じ牢に入れられたジンとディルは、妖需と同じく脱出を果たし、廊下を派手に爆走していた。


突然、兵士達に囲まれ、ジンの制止を受けて、大人しく捕まったというわけだ。


体の重みや苛々が治まった今、暴れる事に関して言えば、はっきり言って賛成だが、ジンの意見の転換が唐突過ぎたのが、少々気になる。


そんなディルの心の内に気付いたのか、ジンが、口を開いた。


「急ごう。フィレーネと妖需が危ないかもしれない」

「……?どういうことだ……?」



「きっと、混血だって事がバレてる。」

ディルは、息を呑んだ。

「―――よかったな。魔物じゃなくて、動物で」



顳を伝った汗が、音もなく地面に落ちた。


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