虚月の灯 追憶の星空
空色ファンタジア
何も見えない。何も聞こえない。こんなにも、空に近い場所にいるのに。
見上げた空は美しかった。近くに行きたいと想った。触れたいと想った。
触れた空は冷たかった。どれだけ近付いて触れても、遠かった。そして、
空は、汚れていた。
地から見れば、美しく見えた。けれど、汚れていた。こんなにも、こんなにも美しいのに。
嗚呼、来てしまったのだ。脚を踏み入れては行けない場所に。人が知ってはいけない場所に。
鳥の様に、此の背に翼があったならば、と――。
? 最果て
「空は、綺麗なの?」
私は、側にいた翼を持つ少年に問う。
「綺麗だよ。とっても綺麗だ」
少年は笑って言う。私は言った。
「そうなんだ。私じゃ分からないんだね」
彼は言った。
「きっと分かるよ。何時か、ね…」
分からなかった。彼の言っていることが。
「僕は、もう行くね。だから最後に、名前、教えて?僕の名前も教えてあげるから、さ」
彼はそう言って笑った。私は言った。
「忘れちゃったの。ずっと此処にいたから」
彼は悲しげに言う。
「そっか…僕は、リエル。君は、名前を忘れちゃったんだね…」
「そうだよ。忘れたの」
私が淡々と言うとリエルは微笑して言った。
「じゃあ、名前つけてあげる。…うん、チイ…、チイがいい。僕の大好きな、地上にある植物だよ」
「チイ…私の、名前…?」
唖然とした表情で私が言うと、リエルはニコッと笑って言った。
「じゃあ、ね。チイ、また何時か逢おう」
バサリとリエルが翼を広げる。私は、大きな声で叫ぶ様に言った。
「リエル。有り難う」
「どう致しまして」
それだけ言って、リエルは飛び立ち、私の前から、消えた。
私は、また独りになった。
これは、何時の話だったのだろう。思い出せずに、私は、天界の鳥籠を開け、飛び出していた。
此の事が何を意味するか知らずに――、只――。
何も見えない。何も聞こえない。こんなにも、空に近い場所にいるのに。
見上げた空は美しかった。近くに行きたいと想った。触れたいと想った。
触れた空は冷たかった。どれだけ近付いて触れても、遠かった。そして、
空は、汚れていた。
地から見れば、美しく見えた。けれど、汚れていた。こんなにも、こんなにも美しいのに。
嗚呼、来てしまったのだ。脚を踏み入れては行けない場所に。人が知ってはいけない場所に。
鳥の様に、此の背に翼があったならば、と――。
? 最果て
「空は、綺麗なの?」
私は、側にいた翼を持つ少年に問う。
「綺麗だよ。とっても綺麗だ」
少年は笑って言う。私は言った。
「そうなんだ。私じゃ分からないんだね」
彼は言った。
「きっと分かるよ。何時か、ね…」
分からなかった。彼の言っていることが。
「僕は、もう行くね。だから最後に、名前、教えて?僕の名前も教えてあげるから、さ」
彼はそう言って笑った。私は言った。
「忘れちゃったの。ずっと此処にいたから」
彼は悲しげに言う。
「そっか…僕は、リエル。君は、名前を忘れちゃったんだね…」
「そうだよ。忘れたの」
私が淡々と言うとリエルは微笑して言った。
「じゃあ、名前つけてあげる。…うん、チイ…、チイがいい。僕の大好きな、地上にある植物だよ」
「チイ…私の、名前…?」
唖然とした表情で私が言うと、リエルはニコッと笑って言った。
「じゃあ、ね。チイ、また何時か逢おう」
バサリとリエルが翼を広げる。私は、大きな声で叫ぶ様に言った。
「リエル。有り難う」
「どう致しまして」
それだけ言って、リエルは飛び立ち、私の前から、消えた。
私は、また独りになった。
これは、何時の話だったのだろう。思い出せずに、私は、天界の鳥籠を開け、飛び出していた。
此の事が何を意味するか知らずに――、只――。
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