虚月の灯 追憶の星空 ? 前編
空色ファンタジア
信じていたと言えば君は笑ってくれたでしょうか。
最期の声を覚えてくれていたでしょうか。
忘れて、しまったのですね。
私と貴方のたった一つの約束を。
指と指を繋ぎ、誓った言霊を。
『そこを出てはいけない』と。
約束、したでしょう――?
? 風の回廊
冷やかな風が僕の頬を撫でた。涙雨が空を舞う。今なら飛べそうだと、背の翼を広げる。
「…リエル。空が泣いていますね。多分…『トリ』が逃げたのでしょう」
僕の名前を呼んで、猫の血をひく少年、レーネが空に手を伸ばしながら言う。
「…『トリ』…。チイのことか…?」
僕が言うと、レーネはキョトンとした表情をして、僕に問い返した。
「チイ、とは、誰です?」
「人間の少女だよ。名前は僕がつけたんだ」
ニコッと笑って僕が言うと、レーネが悲しげに言った。
「飼われた鳥も、飼主を裏切るのですね」
「ずっと飼主を待っていたんだよ。彼女は」
過去を追憶しながら、空を見上げる。彼女と逢った日も、雨だったと思う。地上は、だけど。
「神殿の回廊に、少女が墜ちていたそうです」
急にレーネが言う。
「行ってみる?僕は行きたいな。ついて来てくれる?」
僕が問い掛けると、すぐに返事が返ってきた。
「分かりました」
そう言って歩きだす。傘はないからびしょ濡れで、少し肌寒かったが、チイに逢えるかもしれないと思うと、そんなこと、感じなかった。
雨は、降り続けていた。神殿の回廊に向かう僕達を阻むかの様に。
動きだした運命の歯車が、一つ、噛み合い始めた――。
信じていたと言えば君は笑ってくれたでしょうか。
最期の声を覚えてくれていたでしょうか。
忘れて、しまったのですね。
私と貴方のたった一つの約束を。
指と指を繋ぎ、誓った言霊を。
『そこを出てはいけない』と。
約束、したでしょう――?
? 風の回廊
冷やかな風が僕の頬を撫でた。涙雨が空を舞う。今なら飛べそうだと、背の翼を広げる。
「…リエル。空が泣いていますね。多分…『トリ』が逃げたのでしょう」
僕の名前を呼んで、猫の血をひく少年、レーネが空に手を伸ばしながら言う。
「…『トリ』…。チイのことか…?」
僕が言うと、レーネはキョトンとした表情をして、僕に問い返した。
「チイ、とは、誰です?」
「人間の少女だよ。名前は僕がつけたんだ」
ニコッと笑って僕が言うと、レーネが悲しげに言った。
「飼われた鳥も、飼主を裏切るのですね」
「ずっと飼主を待っていたんだよ。彼女は」
過去を追憶しながら、空を見上げる。彼女と逢った日も、雨だったと思う。地上は、だけど。
「神殿の回廊に、少女が墜ちていたそうです」
急にレーネが言う。
「行ってみる?僕は行きたいな。ついて来てくれる?」
僕が問い掛けると、すぐに返事が返ってきた。
「分かりました」
そう言って歩きだす。傘はないからびしょ濡れで、少し肌寒かったが、チイに逢えるかもしれないと思うと、そんなこと、感じなかった。
雨は、降り続けていた。神殿の回廊に向かう僕達を阻むかの様に。
動きだした運命の歯車が、一つ、噛み合い始めた――。
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