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一週間 最終章 クチズサミ 9

[406]  伊守弐ノラ  2008-05-31投稿
祐輔は無信仰者だ。輪廻も霊の存在も信じていなかった。ただ、それで春樹が安心するのならと考えていた。

しばらくすると、春樹が両手にスコップとツルハシを持って戻って来た。

「待たせたね…それで何処に埋めようか」

「そうですね、外はまずいし…穴の側はどうです?」

「そうだね、そこなら陽も当るし…」

「それに、ロシアの方角です…」

二人は穴の付近の、できるだけ柔らかい所を探して掘り始めた。

大きな石が結構埋まっていて掘りにくかったので、あまり深くは掘れなかったが、それでも人骨を埋めるには充分だった。

春樹はスコップとツルハシの他にシーツも持ってきていた。二人は骨をそのシーツに包んで、掘った穴にそっと入れて上から土を被せた。

「これで安らかに眠ってくれるでしょう」

「ちゃんとしたお墓も作ろう…これからは祠じゃなく、ここまで入ってこないとな…」

春樹は手を合わせた。その顔には少し安堵の笑みが浮かんでいた。

「祠は入口を隠すために残しておきましょう…」

「そうだね…もう少し軽いのに建て替えるよ、今のは一人では動かせないからね」

「二人なら動かせますよ」

「え?!…」

祐輔は感慨深げに春樹を見つめた。

「ポリトフスキーのお墓…二人で守っていきませんか」

「祐輔くん…いいのかね?」

「はい…」

祐輔はニコリと笑った。

「今日は一旦帰ります…その前に、朝食にしません?」

「そうだね、また何か作るよ」

「今度は俺も手伝います」

「私は祠の辺りを片付けてから行くから、先にスコップを納屋に始末っといてくれなかいかね」

二人は祠を元の所に戻すと、春樹は散らばった石を拾い始めた。

祐輔は春樹からスコップとツルハシを受け取ると外へと向った。

洞窟を出ると、辺りは既に白々と明け始めていた。祐輔は歩きながら、無意識に歌を口吟んでいた。

それは一週間の歌だった。それに気付いた祐輔は、すぐにケータイを取り出した。

「春樹さん!…思い出しました、一週間の歌思い出したんです、歌いますよ」

歌い終えると、朝靄の中に、この世の者とは思えない、妖艶で美しい外国人の青年が、祐輔の方をじっと見つめて立っていた。

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