ワーキング・プアからの脱出 5
冷静に考えてみると、不動産屋は最初に、あまり良くない物件を見せて、最後に本当に売りたい少しだけ良い物件を見せて、契約に漕ぎ着けれる。上手なセールスだったと思います。それでも、気に入った物件が見つかり満足しました。
移り住む家も見つかり、周囲に悟らないように、少しずつ、少しずつ、人目を避けて深夜に荷物を運びました。荷物と言っても、二家族が一緒になる訳ですから、必要最小限の物しか運べませんでした。それでも一晩に三回は往復して、10日間位掛かったように覚えています。物を運びながら、移り住む家の掃除と整理を同時に行いました。移り住む準備が整ったのは、4月の終わりで、いよいよ決行の日が数日と迫っていました。
決行の朝、激動の1日が始まりました。ゴールデンウィークの連休が始まる前日でした。義妹を欠勤させて、義母、妻、娘に息子を真っ先に移り住む家に避難させました。私は家を出る時、弁護士が作成した破産通知書を、玄関横の倉庫シャッターと倉庫勝手口に貼り付けて、足早に主取引先の某大手電機メーカーの事務所へ集金に行きました。約束手形を受け取り、その足で某手形割引会社に持ち込み、現金化しました。その現金を代理人の弁護士に預け、弁護士の口座に入金して、保全されました。
会社に到着したのは10時を少し回っていました。従業員を集め、
「本日をもって、営業を終了します。」
と、宣言しました。従業員は、今日が集金日だと知っていましたから、私が遅く出勤しても、何も疑わず、普段と同じように仕事をしていました。突然の会社閉鎖の話に驚きを隠せない様子でした。
1ヶ月の解雇予告手当と、退職金を支給する事が分かり、騒ぐ者はいませんでした。ただ、当初予定していた、午前中に会社をロックアップする事はできず、最終に会社のドアに鍵を掛けたのは、午後3時を回っていました。
市内の弁護士事務所に到着したのは午後4時を回っていました。弁護士に会社、自宅と義父宅の鍵を渡し、激動の1日が終了しました。
帰りに、弁護士事務所前のトイレに入り、仕事に使っていたソフトアタッシュケースを置き忘れ、すぐに弁護士事務所に電話したのですが、持ち去られた後で、結局、私の手元に戻って来る事はありませんでした。たいした金額は入っていませんでしたが、父の形見の時計と財布だけでも戻って来て欲しかったと言うのが本音です。
つづく
移り住む家も見つかり、周囲に悟らないように、少しずつ、少しずつ、人目を避けて深夜に荷物を運びました。荷物と言っても、二家族が一緒になる訳ですから、必要最小限の物しか運べませんでした。それでも一晩に三回は往復して、10日間位掛かったように覚えています。物を運びながら、移り住む家の掃除と整理を同時に行いました。移り住む準備が整ったのは、4月の終わりで、いよいよ決行の日が数日と迫っていました。
決行の朝、激動の1日が始まりました。ゴールデンウィークの連休が始まる前日でした。義妹を欠勤させて、義母、妻、娘に息子を真っ先に移り住む家に避難させました。私は家を出る時、弁護士が作成した破産通知書を、玄関横の倉庫シャッターと倉庫勝手口に貼り付けて、足早に主取引先の某大手電機メーカーの事務所へ集金に行きました。約束手形を受け取り、その足で某手形割引会社に持ち込み、現金化しました。その現金を代理人の弁護士に預け、弁護士の口座に入金して、保全されました。
会社に到着したのは10時を少し回っていました。従業員を集め、
「本日をもって、営業を終了します。」
と、宣言しました。従業員は、今日が集金日だと知っていましたから、私が遅く出勤しても、何も疑わず、普段と同じように仕事をしていました。突然の会社閉鎖の話に驚きを隠せない様子でした。
1ヶ月の解雇予告手当と、退職金を支給する事が分かり、騒ぐ者はいませんでした。ただ、当初予定していた、午前中に会社をロックアップする事はできず、最終に会社のドアに鍵を掛けたのは、午後3時を回っていました。
市内の弁護士事務所に到着したのは午後4時を回っていました。弁護士に会社、自宅と義父宅の鍵を渡し、激動の1日が終了しました。
帰りに、弁護士事務所前のトイレに入り、仕事に使っていたソフトアタッシュケースを置き忘れ、すぐに弁護士事務所に電話したのですが、持ち去られた後で、結局、私の手元に戻って来る事はありませんでした。たいした金額は入っていませんでしたが、父の形見の時計と財布だけでも戻って来て欲しかったと言うのが本音です。
つづく
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