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ワーキング・プアからの脱出 6

[539]  楽園 海風  2008-06-01投稿
気が付くと既に辺りは黄昏時で、ようやく空腹を覚えました。昼食を採っていない事に気が付き、ファミリーレストランでステーキを食べました。これから始まる破産者生活と、倒産の後始末に備えて、最後の贅沢な食事をしました。深夜遅く、最後まで元の家に残しておいた愛犬のラブを迎えに行き、これで家族全員の引っ越しは終了しました。
私の代理人の弁護士とは別に、自己破産申立に対して、裁判所が破産管財人の弁護士を選定してきました。管財人弁護士に会社倒産に関する説明を行い、裁判所によって免責が認められました。本来、免責が認められた瞬間から全ての権利が復活して、クレジットカードも作れ、ローンも組めるはずです。しかし、世の中は破産者に対して非常に厳しくて、今でも私は、コーポレートカード以外の如何なるカードも持っていません。申し込んでも審査で拒否されてしまいます。自分自身が贅沢をして破産したのであれば納得できますが、会社の倒産によって経営者であった私が破産した訳ですから、裁判所から免責を受けているのに、今でも契約拒否されるのは納得できません。また、コーポレートカードと言っても、一般の社員は使用限度額が最初30万円からに対して、私のカードは5万円しかありません。5万円では毎日の買い物に使用するだけで使用限度額を超えてしまいます。免責を認められてから7年間は借金ができないと聞いたことがありますが本当のようです。
債権者集会が裁判所で行われ、倒産会社代表として、
「ご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ありません。」
と、頭を下げました。この日、協力会社社長で、ただ一社、参加した人物がいました。我が社から独立開業した人物でした。倒産するまでの長年に渡って、その誠実な人柄から、数々の無理なお願い、困難な仕事を請け負って頂き、我が社を助けていただきました。それが、このような最悪の結末になり、迷惑を掛けた事を思うと、目頭が熱くなりました。そんな中、債権者集会が終わった後、裁判所の廊下で、私に喰って掛かって来た女性がありました。振り返ると、我が社の元専務取締役工場長のご令嬢でした。本来、会社側の人間で、多額の負債を発生させた張本人に一人で、弁護に回るのならいざ知らす、攻撃側に回るとは、世間知らずのご令嬢でした。
つづく

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