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俺だけのシンデレラ

[435]  サクラ  2006-05-14投稿
―――某日 午後3時25分。沙絵の意識が戻る。
『………………』
「沙絵……」
原因は相手の飲酒運転による交通事故。
『……めん』
「ん?」
『ごめんね』
沙絵は何度も謝った。かすれた声を振り絞って。
『赤ちゃん……産んであげられなくて、ごめんね』
そう、沙絵の腹の中には子供がいた。
3ヶ月――それが、この子供の生きた時間。
1度も抱かずに去ってしまった。
俺達の子供。
『あ……の、ね』
沙絵は泣きながら言った。
『もう……子供は、産めない、て医者様が』
「そんなの……沙絵が生きてる事に比べたら!」
だが、実際俺は悲しい気持ちになっていた。
『公平』
「?なんだ?」
『ごめんね』
「もういいさ。俺はお前が」
『さよなら、なの』
「―――え?」
どういう意味だ?
さよなら、なんて
『ありがとう』
「…………沙、絵?」
しかし返事は、ない。
「―――――――っ」
『沙絵――――っ!』
午後4時52分。
五十嵐 沙絵 永眠



死因は、交通事故による脳内出血。


あれから俺は、また女遊びを始めた。

しかし、いつだってそうだった。
寂しさだけは、埋まらなかった。

……………寂しくて。
寂しくて寂しくて。
今わかった。
沙絵は、俺だけのシンデレラ。
心を満たしてくれる、愛しい人。



―――――愛する人よ

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