落花流水、18話。
「なぁ、百目よぉ。お前、いつの間にこんな可愛い娘と仲良くなったんだ? 最近じゃお前、仕事かここ来る以外外にも出てなかった癖によ」
「煩い。悪かったな、引きこもりで」
「責めてない。責めてないぜ百目くんよぉ。だから話せよ、二人の馴れ初めって奴を」
話をはぐらかそうにも、煩いと一蹴しようと醐鴉に諦める気配はない。そんなに俺が誰かと一緒に居るのが珍しいのだろうか。絡み付く腕を振り払い尚も食い下がる醐鴉に、言う。
「どうしても知りたいっていうなら言うが、醐鴉。同じだよ、俺とお前と」
「あー……そう、か。そういうことか」
「そういうことだ。つまり俺と、コイツはそういう関係なんかじゃない。分かるだろ?」
「なに、何の話?」
コイツ、という言葉に反応した少女が俺達の会話に口を挟んで来た。それに対しなんでもない、と手を振るジェスチャーで告げる。会話内容にさしたる興味がなかったのだろう、こちらはすんなりと引き下がった。視線を、再び中空へ。その顔は、何かしらプラスの感情が働いているように見える。何もないそこを眺めて何が楽しいのだろう、などと考え。即座に振り払う。不要な物だ、と。楽しいのなら、それでいい。水を差す必要はどこにもない。視線を少女から引き剥がす。と。
「おまたせ」
まるで狙い済ましたかのように、マスターが湯気の立つ食器類をトレイに載せて運んで来た。待ってました、と。表立って表現はしないが内面に喜色を浮かべながら、少女がテーブルに並べられた食器に向き直る。喜んでいるのは表情から、手に取るように。一週間に満たない短い付き合いながらも、分かるようになってきたものだ。苦笑し、自らの皿に向かう。湯気の立つ黄色の楕円。オムライスだ。中央部に添えられた赤色が彩りを加える。スプーンで掬って、一口。口に含む。
「……相変わらず、微妙だな」
口に含めばとろける卵は、甘い。舌が痺れるほどに。そしてそれに包まれるチキンライスはちょうどいい塩加減で……詰まるところ、甘みに偏っている。この料理は。それ以外には目立ったところは何も無い。
美味くもなく、まずくもない。それがここのオムライスの味だ。変わることの無い、他に類を見ない味。だから、食べる度に安心する。
「なんか、ひどいこと言われてる?」
「そんなことないですよ。褒めてます」
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