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航宙機動部隊前史後編・4

[523]  まっかつ  2008-06-04投稿
だが、フリースユニオンは、この《戦勝》を徹底的に喧伝した。
又、確かにトレヴィーゾの一件がフリースユニオン=宇宙解放連盟軍将兵に与えた精神的効果は絶大だった。

【…この戦いが歴史的なターニングポイントとなるかはまだ分からない。
我が軍の損害・疲弊に鑑みて、この大戦の主導権をこちら側が手にした等とはとても思えない。
だが、明らかになったのは、敵ギャームリーグ機動部隊は今だ銀河最強であるのに変わりは無いが、彼等が決して神でも悪魔でも無いと言う事だ。
もしも敵が作戦を誤り、我々が最善を尽せば勝つ事は不可能では無いと言う確信が、我が軍将兵に広がり初めていた…】
この戦いに参加した銀河星系連盟軍のリュシァ中将は、回想録にこう書き残している。

詰まり、フリースユニオン陣営では特に、一般兵士や星民レベルで自信を取り戻し始めたのは事実だったのだ。
絶対勝てない敵から強くても勝つ可能性がある敵への認識の転換―これまで彼等の心身を縛り付けていた恐怖と絶望感は、この戦いを経て微かな勇気と希望に取って変わって行った。
そう言う意味で、トレヴィーゾは、地球時代に同じく敵の無敵神話を撃ち砕いたゲティスバーク・ミッドウェーになぞらえられる様になった。

だが、負けた側のギャームリーグは、言わば攻勢を断念したに過ぎず、決して致命傷を受けた訳では無い。
それ所か、純戦闘艦艇に限ったキルレシオ(敵味方完全撃沈比)のみでも1:17と、それこそ化物じみた活躍を示していたのだ。
だが、独断専行した前線の司令官は全員更迭され、統制を取り戻した大司令によって、あの熱狂的な雰囲気はようやく一掃された。

一年半に及ぶギャームリーグの爆発的な拡大は一端終息し、長期持久戦略に復帰した彼等に大規模な反撃を仕掛ける余力をフリースユニオンが残している分けも無く、両軍対峙の形勢に入った。

両軍の主戦線は、太陽系から銀河の回転を遡る事二0光年上流に当たる一帯に敷かれていた。
フリースユニオンは、ギャームリーグの再侵攻に備えて、凡そ八0光年に及ぶ戦線の要塞化に着手した。
要塞化された星系と小惑星・多目的軍用ポッドやエネルギー転送システム・老朽船や廃棄された人工植民体等を無数に駆使して四重に渡る防衛線を構築し、これを三八万の戦闘艦艇と七億人で守備させる構想だった。

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