ある風景 ? マイナスのチェーン
フミは、自分の恋愛感情が正常ではないのではないかと苦悶した。
「康は、私が依存している母親の身代わりだけなんじゃないかしら? 彼の自分に対する愛が真実かどうか、母親と比較しながら彼の行動の一挙手一投足を、私はいつも監視しているわ。」
最近、ニュースで若者の犯罪が頻繁に報じられている。その若者達が育ってきた家庭環境になんらかの問題があったのではないかという説もある。
犯罪者には、社会に対する根深い恨みや憎しみがあり、彼らにとってはすべての人間が敵だとも言われる。彼らは、親さえも信じられず、ある意味、敵なのだ。
人間は幼児の頃に、親から真の愛情や安心感を得られないと、常に愛に飢えた不安定な感覚を持ち、自分の居場所がどこにもないと感じるらしい。
隣近所で暖かい声を掛け合う社会など、とっくの昔に崩壊し「もしかしたら隣に、殺人鬼が住んでいるんじゃないか?」 とまで疑わなければならない殺伐とした時世である。
フミの家庭環境においても時代をさかのぼって思い起こすと……フミの祖母は、息子を若くして亡くすという経験をした不幸な女性だった。少女の頃に、兄を失うという衝撃を受けたフミの母親も当然、いつも何かしら不安な感覚を持っている悲しい人間だった。心に深い傷を負った二人の女性はその後、癒着関係に陥ってしまう。掛け替えのない大切な家族を失った悲しみから、どうにか立ち直るために……今現在の母親とフミの癒着した母子関係は、そっくりそのまま時代を超えて繰り返されているのだ。
親から虐待を受けて育った子どもの場合も、自分が結婚して子どもを持つと、また同じように虐待を繰り返してしまうケースが多いらしい。
このようにマイナスの螺旋、チェーンは、そのままにしておくと未来永劫、続きかねない。
「私は、このマイナスのチェーンをどこかで断ち切らなければならない。大好きだった祖母のためにも、そしてその亡くなった子どものためにも…母親にとって自分の命よりも大事な子ども…」そうフミは決意しはじめていた。今はもうこの世にはいない祖母がフミは大好きだったのだ。フミが非行にも犯罪にも走らずにすんだのは、この優しくて懐かしい祖母との思い出のおかげかもしれなかった。
「康は、私が依存している母親の身代わりだけなんじゃないかしら? 彼の自分に対する愛が真実かどうか、母親と比較しながら彼の行動の一挙手一投足を、私はいつも監視しているわ。」
最近、ニュースで若者の犯罪が頻繁に報じられている。その若者達が育ってきた家庭環境になんらかの問題があったのではないかという説もある。
犯罪者には、社会に対する根深い恨みや憎しみがあり、彼らにとってはすべての人間が敵だとも言われる。彼らは、親さえも信じられず、ある意味、敵なのだ。
人間は幼児の頃に、親から真の愛情や安心感を得られないと、常に愛に飢えた不安定な感覚を持ち、自分の居場所がどこにもないと感じるらしい。
隣近所で暖かい声を掛け合う社会など、とっくの昔に崩壊し「もしかしたら隣に、殺人鬼が住んでいるんじゃないか?」 とまで疑わなければならない殺伐とした時世である。
フミの家庭環境においても時代をさかのぼって思い起こすと……フミの祖母は、息子を若くして亡くすという経験をした不幸な女性だった。少女の頃に、兄を失うという衝撃を受けたフミの母親も当然、いつも何かしら不安な感覚を持っている悲しい人間だった。心に深い傷を負った二人の女性はその後、癒着関係に陥ってしまう。掛け替えのない大切な家族を失った悲しみから、どうにか立ち直るために……今現在の母親とフミの癒着した母子関係は、そっくりそのまま時代を超えて繰り返されているのだ。
親から虐待を受けて育った子どもの場合も、自分が結婚して子どもを持つと、また同じように虐待を繰り返してしまうケースが多いらしい。
このようにマイナスの螺旋、チェーンは、そのままにしておくと未来永劫、続きかねない。
「私は、このマイナスのチェーンをどこかで断ち切らなければならない。大好きだった祖母のためにも、そしてその亡くなった子どものためにも…母親にとって自分の命よりも大事な子ども…」そうフミは決意しはじめていた。今はもうこの世にはいない祖母がフミは大好きだったのだ。フミが非行にも犯罪にも走らずにすんだのは、この優しくて懐かしい祖母との思い出のおかげかもしれなかった。
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