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ワーキング・プアからの脱出 8

[524]  楽園 海風  2008-06-05投稿
第8章 放心
2003年5月初旬、私は抜け殻のように気力を失って、移り住んだ借家の2階で天井の節を数える毎日を過ごしていました。天井を見つめながら頭の中に去来するのは、
『自分の判断は正しかったのだろうか?』
『まだまだ頑張れたのではないだろうか?』
と、倒産させてしまった事に対する自責の念による自問ばかりでした。
『他に方法があったのではないだろうか?』
『約束手形の振出先に頭を下げて期日変更、手形の差し替えができたのではないか?』
自分自身、決断したことですが、判断が正しかったのかどうかは分かりません。しかし、あの時点での最良の判断だったと信じています。
何もする気に成れず、ただ畳の上に仰向けに大の字に寝転がって天井を見つめる日が数日続き、次第に言い知れない孤独感に襲われました。今、自分は何も生産せず、ただ物と時間を浪費するだけの存在、世の中から必要とされない存在、そう思うと寂しさと孤独感が体の中からじわじわと染み出して、居ても立っても居られなくなりました。
『働きたい、世の中の役に立ちたい。』
心の底から、そう思いました。仕事をしないこと、働けないことが、これ程辛く、孤独感に苛まれることだと初めて知りました。世の中に対し、何も生産しない、役に立たないことが、これ程の苦痛を自分自身に与えるとは考えてもみませんでした。
次の日、妻と2人、ハローワークで職探しを開始しました。職業と時給に重点を置いて探す私に対し、妻は全く異なる視点から、
「あなた、これはどう?」
と、私の目の前に1枚の求人票を静かに置きました。妻は、私が趣味の写真で使用しているカメラの製造会社名を覚えていて、同じ企業名から求人票に目が止まったのです。早速、ハローワークから連絡を取ってもらい、面接の日が決まりました。
幾度となく営業車でこの会社の前を通っていました。幾度となく目にしていたビルでしたが、目の当たりにすると想像以上に大きく感じました。守衛所で面接を受けに来た事を告げると、地下1階に行くように指示されました。
指示された応接室に入ると、既に4名の応募者がソファーに腰掛けていました。50歳は超えていそうな女性、20歳代の青年、私と同世代らしい40歳代半ばの男性、私より少し年上だろう50歳代の男性、皆、少し不安そうな、緊張した面持ちで、こちらを振り向きました。 つづく

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