箱のなか5
「なぁに赤くなってんのよ〜」
アズサはニヤついて香月の腕を引っ張る。
「鬼編集長の癖に〜可愛い!」
「ちょっと、やめてよ!馬鹿アズサ」
はしゃぎあう二人に雅也と亮は呆れたようについていく。
初夏の風は、まだ涼しくかなり薄着の香月には肌寒いくらいだった。
アズサはちゃっかり薄手のパーカーを羽織り、いつも持ち歩いている大きなオレンジ色の手提げを持っている。
いつもパンパンな手提げの中身は彼女いわく
「必要最低限」なのだそうだ。
公園についた四人は深夜の2時までの4時間あまりをうろうろと潰すことになった。
一時間もすると当然ながら二人ずつになり、アズサと雅也はジャングルジムで何やら真剣に話こみ…香月と亮は少し離れた鉄棒にもたれて僅かにぎくしゃくしながら、この夜を楽しんでいた。
「私さ…本当、嬉しかった。亮が来てくれて」
普段可愛気がないのを自覚している香月は思い切って言ってみる。
夜だから言える。
顔の赤さが解らない…と思えるから。
亮は嬉しそうに笑って、香月の肩まで伸びた黒髪をクシャクシャっと撫でた。
「ばーか、可愛い事いきなり言うなよ!…俺はさ…俺は、香月の頼みならなんでも…いやある程度は聞く」
なによ、ある程度って。
内心、突っ込みつつ、クスクス笑ってしまう。
こういう優しいとこが、昔っから大好きだった。
「雅也もアズ相手じゃ大変だよなぁ。本っ当昔からじゃじゃ馬だからさ…お前とはタイプ全然違うよな。同じお転婆でも」
「お転婆ってなによ」
亮はしばらく考えて、
「香月は危険な事があると首を突っ込まずにはいられないタイプ。アズは自分から危険な事を思い付くタイプかな」
香月は目を丸くして…ぷっと吹き出した。確かに当たってる。
アズサは小さい時から、悪戯を思い付いては大人を震えあがらせていたっけ。
気味の悪い病院に今から行くというのに、アズサをみると目をキラキラさせて雅也と話し合っている。
前から言うように幽霊がみたくて堪らないのだ。
時折、遊んだり話し合ったり食べたり飲んだりしているうちにあっというまに
AM 1・00
「そろそろ行こうか」
四人は歩き出した。
行く先は
柿崎総合病院
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