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奈央と出会えたから。<165>

[537]  麻呂  2008-06-08投稿
峠を下ると、新谷先輩のスープラが止まっているのが見えた――



あたし達の乗ったGT-Rは、その横に並んで止まった。



バンッ――



新谷先輩が車から降りたのに合わせて、あたし達も降りた。


『奈央ちゃん。どうだった?!俺のドリフト。ちゃんと見てくれた?!』



新谷先輩は、サングラスを外して、あたしに優しい目を向け、そう言った。



均整のとれた優しい顔立ちに、大人の魅力を感じさせる、伸ばしかけの口髭。



へぇ‥‥新谷先輩って、こんな顔してたんだ‥‥‥。



『はい。峠の途中の駐車スペースで、大沢先輩と聖人と一緒に三人でバッチリ見てました。とてもカッコ良かったです。』



あたしがそう答えると、



『そうか。そりゃ良かった。まだ先の長いローンで買った、このスープラも、

奈央ちゃんにそう言われちゃ、走った甲斐があったってもんよ。』



新谷先輩は、そう言って笑った。



『なんだよ、さっきから新谷ばかりカッコ良過ぎだぜ。

ねぇ奈央ちゃん、
俺のGT-Rも乗り心地良かったでしょ?!』



大沢先輩からも、そう質問され、



『勿論です。お二人のゼロヨン対決は、とてもハイレベルな戦いだったって、

車のコトが無知なあたしでも、見てて分かりました。』



―なんて、分かった風に答えては見たけど、本当の所はあたしも凄く緊張していたし、



あまりにも早い展開で変わる目の前の状況に、正直付いて行けなかった。



『良かったな、奈央。ずっと車に乗ってみたいって言ってたもんな。』



聖人があたしに、ニッコリ微笑む。



『うん。今日は、新谷先輩、大沢先輩、本当にありがとうございました。

あたし、今日のこの日のコトは、一生忘れません。』



突然のあたしの言葉に、新谷先輩と大沢先輩も少しだけ驚いた顔をしたけど、



『真面目な女の子はね、もうこんな悪いオジサン達と遊んじゃ駄目なんだヨ!!』



大沢先輩が、その緩めにパーマをかけた茶色の髪をサッと掻き上げた。

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