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一週間 最終章 クチズサミ 12

[394]  伊守弐ノラ  2008-06-12投稿
「ごめんよ、ごめんよ…」

ポリトフスキーは、呆然とする幼い祐輔と悠子に何度も謝った。

『そうだ…俺はこいつに出会っていたんだ』

「頼む…今の歌はもう歌わないでくれ…私が私でなくなるから…同じ過ちをまたしてしまった…菊枝」

そう言ってポリトフスキーは消えていった。

『俺と悠子を見て、こいつは菊枝さんを思い出しのか…』

また場面は変った。今度は同じ洞窟で、ポリトフスキーが覇気の無い顔をして一週間の歌を口吟んでいる。まだ祠の無い岩の裂け目の側に座り込んでいた。

やがてポリトフスキーは力無く立ち上がり、ふらふらと入口の方へ歩いてゆく。

洞窟は入口まで少し弧を描いていたので、徐々に木製の枠組みと見張りが見えてくる。

ポリトフスキーは、見張りの者に菊枝の父親に話があるから呼んできて欲しいと願い出た。

見張りは来るはずがないと断ったが、それでもいいからと食い下がるポリトフスキーのしつこさに根負けして渋々その場を離れた。

そしてポリトフスキーは、また奥に戻って岩の裂け目からもう一つの空間へとやって来た。

風呂敷を開き、軍服に着替えて拳銃を取り出す。目を瞑り銃口をこめかみに当て引金に掛けた人差し指に力を入れた。

銃声は洞窟の中を駆け巡り、入口、そして谷の岩壁の穴から抜けていった。その穴から、銃声を聞き付けたのか少女が慌てた様子で駆け込んで来た。

『菊枝さんなのか…でも、さっきから何か変だ』

菊枝は、手が血で真っ赤になるのも構わずに、ポリト!ポリト!と叫んでポリトフスキーの亡骸にしがみ付いた。

やかてポリトフスキーの側頭部から流れ出した鮮血は、菊枝の膝にまで達していた。

菊枝は何を思ったのか、辺りを見回し風呂敷を見つけると、流れ出る血の海に指を浸けて広げた風呂敷に一週間の歌を書き始めた。

『なんてことだ…菊枝さんだったのか…でも、何故こんな事を…』

それは異様な光景だった。

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