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一週間 最終章 クチズサミ 13

[388]  伊守弐ノラ  2008-06-13投稿
菊枝は、歌を書き終えるとまた穴を抜けて岩壁の道をつたい、山道から雑木林へと家に向って歩き出した。駆け出すこともなく、ゆっくりと。

家に着いた菊枝は、母親が軟禁されている二階の部屋へと階段を登る。途中、ポリトフスキーが話をしたいと見張りから聞かされた父親が、話など無いと憤慨している声が聞こえてきた。

菊枝が洞窟で起きた事を話すと、母親は狼狽して窓から飛び下りた。そして足を痛めながらも洞窟へと向う。

菊枝も父親に気付かれぬよう、そっと階段を降りて母親の後を追った。

洞窟に着くと、母親は大きな石で南京錠を壊し、中へ入って岩の裂け目を奥へと進む。久しぶりに見るポリトフスキーは、変わり果てた姿て横たわっていた。

母親はポリトフスキーの髪を震える手で撫で、ふらふらとまた裂け目の方へ向って歩き出した。すると、後から来た菊枝が裂け目の外で待っていた。

菊枝はポリトフスキーが口吟んでいた歌を、一緒に歌ってほしいと母親に言った。菊枝の後について母親は歌う。

そして歌い終わると、怪物と化したポリトフスキーが現われ母親に襲いかかる。

母親はすぐに絶命した。夥しい血の中で、菊枝は怪物を見つめて笑っていた。 それを見て怪物は、美しい青年の姿に戻った。

「菊枝…どうして…」

「あのね、あのね、こうしたらポリトが戻ってきてくれる気がしたの」

母親の返り血を浴びた顔は、より無邪気な笑みを浮かべていた。

「そのためにはお供えしないと…ポリトをいちばん好きなのは菊枝だもん、カカさま邪魔だもん」

「私がくだらない歌を口吟んだばかりに…」

ポリトフスキーは菊枝を抱き締めた。

「菊枝…ごめん、ごめんよ」

「なんでポリトが謝るの…ポリトに酷い事したトトさまも、そのうちあげるからね」

ケケケケケケ…

不気味な笑い声が、洞窟に木霊する。

笑い終えると、菊枝はポリトフスキーの腕の中で意識を失った。

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