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星の蒼さは 76

[437]  金太郎  2008-06-14投稿
「アキ……」

殴られ、蹴られ、薄れ始めていた意識の中に、ふと『蒼』が入り込んできたのはハルが来る一瞬前。
『蒼』は素早く脳の中を駆け巡り、アキに活力を与えた。
正常に機能し始めた脳が、いや、脊髄が反応し、アキは悲鳴を上げた。

そう、アポロは…

「ダメッ、逃げて!」

そう言おうとしたが、掴まれた髪を思い切り引っ張られ、声にならない。

「君は誰?アキって誰の事?」

既に殺気を放っているアポロが冷静に問う。

「アキに何やってんだ、その手を離せ」

殺気に気が付かないのか、それとも気にも止めていないのか、ハルは平然と言い放った。

「何やってるかだって?見てわからないのかい?僕という存在をルナにわからせてやってるんだ」

アキの髪をぐいと引き上げ痛みに歪むアキの頬を擦りながらアポロは笑った。

「僕の『ルナ』にね」

『ルナ』を強調してハルを睨み返し、また笑いだす。

いけない!アキはハルに迫る『赤』を感じとった。

「逃げて、ハル!お願い!殺されちゃう!」

目を潤わせながら言い切って、ハルと目が合って、絶句した。

どこまでも澄み渡る蒼穹の如き蒼い目。

東洋人にはあり得ないハルの蒼い目は薄暗い裏通りにあってなお、太陽の差した真夏の空のように光り輝いていた。

大丈夫。

目がそう言い、大きく頷いたハルはゆっくりとアキ達に近づいてくる。

「地球の蛆虫の分際で、僕に近づくな!!」

「アキを返せ」

「ぐっ……」

アポロの『赤』い瞳に恐怖が走った。

「クソッ!近づくなって言って……」

言い終わる前に、ハルの拳はアポロの顔面を捉え、アポロの細身の身体は宙を舞い、地面に叩きつけられていた。

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