Mind Adventure 27
唸りをあげて、鼻先すれすれの所を、剣が通り過ぎて行く。
わざとぎりぎりで避けて、相手の油断を誘いつつ、手の中のワイヤーを操り、縛り上げて適の数を減らす事だけは忘れない。
ジンが何十にも細かく契った使い魔のお陰で、道に迷う事なく進めるが、警備が堅すぎてたとえ弱かろうと、時間はどんどん過ぎていく。
「場所が分かってるなら、天井裏じゃ駄目なのかよ!」
ぜいぜいと、息を切らしながらディルが吠える。
「駄目なんだよ。ここ、人を閉じ込めておくだけじゃなくて、研究の為の施設でもあるみたいでさ。屋根裏、コードまるけ。ぐっっっしゃぐしゃ」
あっけらかんとした口調だが、ジンは急かすようにスタスタと独走して行く。
恋人とか、そういう雰囲気を感じ取った事は、一度もないけれど、ジンとメシアがお互いを特別視しているのは分かっていた。
素性を聞かれれば、困ったような笑みを浮かべる者同士。
どちらかが壊れれば、二人とも壊れてしまいそうな気がするほどに。
【錬金・合成学総合研究室】
「あれだけ派手にやったし、今は中に警備もいないみたいだ。今から地図書くから、フィレーネのとこ行ってやってくんない?」
地図を手に取るやいな、やディルは直ぐに走り出そうとしたが、やはり妖需は気付いたようだった。
ディルに続いて数歩進み、躊躇するように振り返った。
「無理しちゃ、駄目だよ?」
気遣わしげな視線に、一瞬苛立ちを覚え、振り払うように頭を振るう。
赤の他人のはずなのだが。
他人の空似というものには、ほとほと困ったものだ。きっと奴もこう言う。
瞬時に気持ちを切り替え、意識を扉へと向ける。
人数はそう多くないようだが、道中すれ違った奴らほど、へぼでもないようだ。
「さぁーて、いっちょ引っ掻き回してやるか…」
しがらみさえなくなれば、元の自分に戻れる。
口調は自然と砕け、血が騒ぎ回る。
俺の時間が、始まる。
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