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君が思い出になる前に?

[435]  2006-05-18投稿
やがて絵里と京一は結婚し、絵里は京一の子を身籠った。そして出産予定日を前に絵里は
「京一さん…話があるの」
そう言って京一の隣に座り、深呼吸して目を瞑り、話し始めた。
「あのね、あたしが話し終わるまで何も言わずに聴いててね?京ちゃん。ずっと黙っててごめんなさい。あたしは絵里なんかじゃない。沙羅だよ。体は絵里なんだけどね、中身は沙羅なの。あたしが事故に遭った日のこと覚えてるかなぁ…あたし‥沙羅の体はあの日確かに死んだの。即死だったわ。でもね、脳っていうか…精神的には生きていたの。それでね、絵里さんも丁度あたしと同じ時間に脳死なさったの。つまり、あたし沙羅は、絵里さんの体をお借りしてあなたといるの。なんだか信じられないと思う。だけど思い出して?あなたは沙羅のことを日に日に思い出さなくなったでしょ?それは傍にあたしがずっといたからだし、同じようなツライ感覚になったのはきっと前に一度だけ大喧嘩したあとの感覚でしょう。違うかな?」
京一は言葉が出なかった。これを奇跡と呼ばないでなんと呼べば良いのか、沙羅が自分の元へ帰ってきてくれたんだ。京一はそう思い、心から喜んだ。しかしその喜びも束の間、沙羅の口から思いもよらぬ言葉が出てきたのだ。

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