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ガンバレ、俺

[223]  ANNA  2008-06-17投稿
親父は箸を持つ手を止めた。
「今はまだ実感として受け止められないんじゃないか?俺だって、千里や一歩が突然死ぬなんて考えられないしな。でも実際には息子さんが亡くなってるんだから、お葬式はやらなくちゃいけないし、ほかにもやらなくちゃならないことはたくさんあるだろうから、今は泣いてる場合じゃないんだよ。」
と親父は言った。
「でも偉いよね。慰められる立場の人がそうやって、人に声をかけるんだから。私にはできないなぁ。ましてや同じ年頃の子供を見たら、いろいろ思い出すこともあるだろうしね。絶対にまだまだお辛いと思うよ。」
とお袋は言った。

俺ひとりが混乱してる訳じゃないんだ。
親だから強い訳でもないのか。

「慰められる立場の人が『慰める』」
俺にもできないよなぁ。

今、親父やお袋が死んだとして、俺は斎藤先輩のお父さんのように振る舞うことができるか?

できないな...。

夕飯が終わって、部屋に戻ってからもしばらく考えた。

こんな時は姉さんだ。
姉さんにメールした。
「生きるってなんですか」

斎藤先輩はある朝、起きて来なかった。前日は会社の飲み会だったけど、先輩はミュージシャンで喉がやけるから飲まないのは誰もが知っていたし、今の時代はお酒を強要する人もいないとお葬式の席で聞いた。
原因究明の司法解剖はしなかったという。
でもこんなに突然...

姉さんからメールが返ってきた。
「ホント『生きる』ってなんだろうって考えちゃうよね。斎藤くんみたいに突然亡くなる人もいるし、世の中には死にたい人もいるしね。
でも、確実に言えることは『いのち』は与えられているものであるということ。どんなに生きたくても自分のいのちを伸ばすことはできないっていうこと。
それと確実に言えることは、生きている人間には誰にでも必ず『死』が訪れること。
だから、今日できることは今日のうちにやるんだよ。『あの時ああ言えばよかった』『ああすればよかった』って後悔して死ぬのは嫌でしょ?
いつ何どき命を取られるか分からないんだよ。
『生きてる』じゃない、『生かされてある命』だからね」

俺は、斎藤先輩の『死』を通して、教えられた。
俺の中で劇的に何かが変わる訳じゃないけど、このままじゃいけない。

そう思えた。

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