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星の蒼さは 79

[476]  金太郎  2008-06-20投稿
「全く!人使いが荒いんだってーの、ペンタゴンは」

大気圏すれすれの宇宙と地球の間を進む一隻の宇宙駆逐艦の中で艦長が文句を垂れていた。

「艦長、そろそろ[パラソル帯]です」

「んなもん、見りゃわかるんだよ」

宇宙空間でキラキラ光る物体と言えば[パラソル]しかない。


[浮遊反射板パラソル]

月が誇る巨大な太陽光発電機[アマテラス]。これの生み出す膨大な光エネルギーを放射する月の決戦兵器『ザ・ゴッド・オブ・デイズ』。太陽神の名を持つ太陽系最強の兵器は開戦当初、世界各国を焼き払った。

月にあるため、『ザ・ゴッド・オブ・デイズ』には手を出せない。その問題を解決したのは『日傘』こと、[パラソル]。
一定以上の光を遮断するこれは、現在[神]に対抗し得る唯一の盾である。

その内、ニューヨーク上空にある[パラソル]がここ数日微妙に軌道をずらし始め、修正しなければ、じきにニューヨークが『ザ・ゴッド・オブ・デイズ』の攻撃可能区域になってしまうというのだ。

「大体、つい一ヶ月前に点検したばかりじゃねーのか!?」

宇宙空間を浮遊しているのだから軌道をずれて分解してしまう事は時たまあることだ。

「今や[パラソル]様は国防の絶対条件ですからね」

「くだらねー、さっさと月の野郎共を捻り潰せばこんな[鏡の親分]みてーな板ッ切れには頼らずに済むんだ」

「それが出来れば苦労しませんって」

艦内に笑いが起こる。

「おい、調査隊を出してどのくらいの故障が調べろ。故障が無かったらペンタゴンに殴り込みだ」

小さな調査艇がフラフラしながらパラソル帯向けて進んでいく。

「相変わらず下手ですね」

何か事故が起こるんじゃないかと艦長を始めとして期待しながらある程度の緊張を持って調査艇を見守っていた。

「おい、早く行け。補助輪を取ったばかりの自転車じゃないんだぞ」

こう言おうと艦長がマイクを掴んだその時だった。


突然、フラフラしていた調査艇が

爆ぜた。

「・・・!!!?」

暗い宇宙の中に、いきなり真っ赤な火球が現れたのだ。艦長はもちろん、艦内の誰一人としてそれを一瞬で理解した者は少なく、


まして、それが月軍の斥侯部隊による先制攻撃であると理解したものは一人もいなかった。

[パラソル]帯に潜んでいた月機動軍は数分を要せずに駆逐艦を破壊。『作業』を再開した。


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