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悠久の抱擁 三

[178]  馨子  2008-06-20投稿
一世一大の決意のもと、容子の受験に取り組む姿勢は一変した。
猛烈な勢いで、成績は上がり始めた。
日に日に、鬼気迫る形相に変わっていく容子の様子は、瑠璃や周りの友人達の心配を大きく膨らませる。
「ねぇ、容子大丈夫なの?
何だってあそこまで、悲壮に自分を追い込んでる訳?
瑠璃、ちょっと止めてあげなよ。倒れたらマジ、何にもならないんだよ!」
容子と瑠璃が、大の親友だと知る数人の友人達が、見兼ねて声をかけて来る。
その度に瑠璃は、困惑した表情を浮かべた。
「ん…。
私も言ってはいるんだけどね…。
これだけはやり通すんだって言って、聞いてくれないのよ。
今はただ、見守るしかないんじゃないかと思ってるんだ…。」
容子の事は、瑠璃が1番気にかけているのは、誰の目で見てもよくわかる。
だから、それ以上の事は、誰にも言えないのだった。
果たして、季節は確実に移り変わっていき、長く苦しかった受験勉強の成果を問う試験の日がやって来た。



容子の事が気になるとはいえ、瑠璃自身も受験の当事者である。
当日の朝は、瑠璃以上に母の和子の方が、緊張しているらしかった。
それを隠そうと、和子はアタフタと動き回っている。
ジッとしているのが苦痛らしく、しなくてもいいような事を、セッセとしている。
和子の姿を見ていると、わずかに瑠璃の中にあった緊張感は、すっかり消し飛んでいた。
「お母さんったら…。受験するのは私なんだから、もうちょっと落ち着いてよ。私まで妙に焦るでしょう!」
瑠璃は笑いながら、食器棚の中のコップまで磨こうとしている和子に、声をかけた。
バツの悪そうな顔を向けて、和子は情けない声を出す。
「だって、瑠璃ちゃん…。お母さん、何だか地に足がつかなくて、黙ってられないんだもの。」
「やぁね〜!私なら大丈夫だから!ちゃんといつも通りやって来るわよ。笑
お母さんが落ち着かないと、こっちまで緊張しちゃう!」
わざと口を尖らして、瑠璃がニラむふりをすると、和子は慌ててコップを食器棚に戻した。
「そうよね、お母さんが緊張してどうするのよね。」
「本当に大丈夫だってば!…もう、行くよ。容子と待ち合わせしてるし。」
瑠璃は、頑張ってね〜!という母の大声に送られて、受験会場へと容子と共に向かったのだった。

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