花の調べ 7
「すごいすご〜い! まるで指に魔法がかかったみたいだわ!」
『うふふっ♪ お姉さんがもともと上手だからよ』
今夜の曲は【子犬のワルツ】だ。
とっても可愛らしいアップテンポな曲に合わせ、猫たちが声を立てずに『にゃーっ』と鳴く様な仕草をする。
すっかり打ち解けた僕達に、咲季は新しいお遊びを始めていた。
そもそも小村咲季は〈幽霊〉なのである。
「それじゃ、取り憑く事できるのかしら?」
「いや、取り憑くってお前なぁ……」
『う〜んとね? はちょう、とかが合えばできるんだって』
「あら!面白そう」
そんな感じで咲季は同じ名前の『コムラサキ』という小さな蝶さながらに、僕と薫に代わる代わる入っては、はしゃいでいる。
花から花へ、……と言いたい所だが、僕を花に例えるのは(かなり)無理があるので敢えてそう言わない。
咲季が入り込んだ時の薫は、最初の会話のように〈天才ピアニスト〉に変身するって訳である。
僕らがそんな事をして楽しんでいる時、表で車のドアがバンッ、と閉まる音がした。
「あなた方は?……」
『あ!壮吉!』
「やはり、姉さんもいらしたんですか……」
不意にベランダの窓から顔を覗かせた白髪の紳士を見た咲季は、驚きの声をあげていた。
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