携帯小説!(PC版)

トップページ >> ホラー >> 五色の炎?

五色の炎?

[429]  中村モモ  2008-06-26投稿
ファミレスを出ると、蒸し暑い空気に取り囲まれた。
「暑い!」
私がいうと、梁は
「僕の街は内陸にあるので、日本の夜の暑さにびっくりしました」
と言って、不器用に笑った。私が「そうなんですか」と言い、笑い返そうとしたとき、ものすごい衝撃音がして梁の姿が消えていた。
私は、頭の中が真っ白になり、その場に立ち尽くした。梁は10メートルほど先で、あらかた形を失った状態で、転がっていた。
何が起こったのだろう?真っ白になった頭に、必死に、目の前にある情報を、つめ込んでゆく。
トラックが、梁のからだの横にあった。あれで轢かれたのだ。しかし、どうして?私たちは、何も危険な場所にいたわけではない。ファミレス前の、にぎやかな駅前の道。
だけど、梁が轢かれて、そして、どう見ても死んでしまっている…のは、確かなのだ。
すぐに警察と救急車が呼ばれ、梁の体は救急車の中へ運び込まれた。
そして、私は警察官から声をかけられた。被害者のお知り合いですか?
私は、頷いた。お知り合い?「お知り合い」だろうか?しかし、私たちは今一緒にここにいたのだから、他人の目から見たら、「お知り合い」になるだろう。
梁の様子はどうだろう?…あぁもう彼は死んだんだっけ?…じゃあ、あの黒い炎は、どこへ行くんだろう?
救急車の方を見やると、ドアの隙間からにゅるりと黒い炎が出ていくのが見えた。じっと後を、目で追ってみると、炎は人混みの中を何周かぐるぐる回って、しゅるりと小さくなって消えた。
炎が消えたあとに何かが落ちたように見えたので、警官に「失礼します」と一声かけてそちらへ行ってみると、太い、黒々とした長い髪が一本、ぺたりと落ちていた。
髪を拾うと、私はつとめて冷静になり、今、目の前で起こっていることを、理解しようとした。
梁が死んだのは、「トラック」という直接的原因と、「黒い炎」という間接的原因があった。そう考えて、まず間違いないはずだ。梁は、呪いの力によって、殺されたのだ。
私は身を固くした。「冷静になれ!」「冷静になれ!」心の中で何度も、自分の頬を叩いた。
しかし完全に冷静になるのは、不可能な話だった。私は恐怖で、すっかり硬直していた。
今、目の前で起こったことは、それが自分の身に降りかかっていたとしても、何ら不思議はないことなのだ。
それは恐ろしい話だった。

感想

感想はありません。

「 中村モモ 」の携帯小説

ホラーの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス