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星の蒼さは 83

[456]  金太郎  2008-06-26投稿
「あれは……SAMURAIシリーズか!?」

狩野が叫んだ。

「侍……?」

野口は訳がわからんとばかりに聞き返す。

[TheGodOfDay]の攻撃を受け壊滅したニューヨークの上空は、両軍あわせて百以上のWWが入り乱れる大混戦と化していた。

その中、アメリカ軍のWW[ランブルドッグ]を次々に斬り伏せて、あおかぜ隊に直進してくる黒いWWがあった。

[蟒丸(ウワバミマル)]

現在日本で正式採用されるWW、[零]や[闘魚]は全てアメリカ式であり、集団戦に向いた射撃能力と生産性を持った傑作機だが、これは日本がアメリカ式WWを取り入れる前の日本式WWシリーズである。
白兵戦に於いて世界最強を誇り、高い運動性能を持ちながら、数で勝る月軍に抗しきれなくなり姿を消した幻のWWシリーズ。

[SAMURAI]

そのシリーズ最後の世代の一つ、蟒丸だ。

「月軍に捕獲されていたのか……」

月軍に捕獲され、改良が加えられているのか。

「乱戦に持ち込まれてはSAMURAIシリーズには勝てない!」

そう叫ぶと狩野は零を彷徨させ、一直線に混戦の中で暴れ回る蟒丸に突っ込む。

白熱刀を抜き、蟒丸に斬り掛かった。

(あ?なんだ)

……聞き覚えがあった。

横薙き刀を振るう。
白熱刀同士がWWの馬力でぶつかり合い、夜のニューヨークに赤い華を咲かせた。

だが、白兵戦は完全に蟒丸が上だった。
すぐに第二撃目が狩野の零の顔面に振り下ろされた。

狩野は咄嗟に左腕を振り上げ、白熱刀を防ぐのではなく振り下ろされた蟒丸の右腕を殴り付けた。

しかし、馬力負けしている零に機体の当たり合いでは勝ち目はない。
逆に左腕が使い物にならなくなった。

負ける…!

覚悟を決めた狩野に、懐かしい声が響く。

(…お前…京一?)

声の主は目の前の敵WW、蟒丸だった。

(今の防ぎ方、テストパイロット時代に何度もやられた技だ…お前京一だろ!?)

「吟次…?二ノ宮吟次!?」

それは紛れもなく、かつて夢を語り合った親友、陸軍中尉二ノ宮吟次だった。

「何故だ?何故お前が月軍にいる!」

(さあ?成り行きさ。恵美や清太は元気か?)

「刀を収めろ。月は敵だ」

昔から適当な男だったが、筋は通す人間だ。
敵に寝返るなど…

(らしくねーな、[鬼の狩野]。俺達はもう敵同士だぜ)

狩野が顔をあげる前に、狩野の零の腹部には蟒丸の白熱刀が突き刺さっていた。

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