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夕日が沈む前に(6)

[149]  主役は銭形  2008-06-29投稿
その涙はまるで雨のように強く床を叩いた。そこには悲しみの水たまりができていた。
「急性白血病ですか…」
俺はそれ以上の言葉を語れなかった。むしろそれ以上語りたくなかったのかもしれない。
「娘はこのことを知りません。でも気がついてるんだと思います。以前はすごく明るい子だったんです。でも最近は話もろくにせず、笑うこともなくなりました。死にたいって時々漏らすんです。だから高橋さんに…」
女性は力無く床に膝をついた。さきほどの涙のみずたまりが湖のように床一面に広がっていた。俺は女性の肩をとり椅子に座らせた。
「娘さんの病室に案内してください。お願いします。」
俺は決意のこもった声でそう告げた。女性は小さく頷くと涙を拭いて優しく微笑んだ。俺はないもできないかもしれない。何ができるかわからない。でも偽善ではなく素直に役に立ちたいと思った。それが先程の言葉を自然に言わせたのだった。すると女性はおもむろに席を立った。
「ご案内します。」
今までに聞いたことのないほど弱く沈んだ声だった。
205号室。佐藤茜。病室の扉でそう確認することができた。女性は静かに、でもしっかりと扉を開けた。
「茜。今日はスペシャルゲストに来てもらったよ。」

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