悠久の抱擁 五
瑠璃が迷っていたのは、中学生の時にやっていたバレーボールを続けるかどうかである。
というのも、思いもよらないクラブの顧問の先生に、やってみないかと誘われた。
ずっと固辞していた瑠璃だったが、「見学するだけでもいいからいらっしゃい」と、半ば強引に引っ張って来られ、初めてそのスポーツを目の当たりに見る事になってしまった。
そういうスポーツがある事は、何となく知ってはいたが、実際にどういうふうにするのかまでは、全く知らなかった。
『新体操』という名前だという事さえ、先生の口から初めて知った。
「ほら!ちょっと手具を扱ってごらんなさい。」
瑠璃を誘って連れて来た、新体操部顧問の山崎秋子が、ニッコリと微笑みながら、フラフープのようなものを手渡した。
それを握らされても、どう扱っていいものかわからないし、瑠璃は戸惑った目で秋子の顔を見た。
瑠璃の戸惑いをすぐに察した秋子は、近くの部員に声をかけて、もう一つ同じものを持って来させた。
「こうやるのよ」
秋子は、そう言うと手にした輪っかを体の前や横で廻して見せる。
まるで、自分の体の一部のように、手や肩や背中を転げ回るそれは、優雅で力強く、しなやかで美しかった。
瑠璃は、自分にこんな事が出来るのだろうかと思ったが、思わず真似をしてみていた。
カツン…カツン…と、手具が床に落ちる音がする。
やはり、全くやった事がないのだから、そうそう上手くいくはずもなく、瑠璃は『ふぅ…』と息を吐いた。
「すぐに出来るようになるわ。手具の扱いは慣れだからね。私が貴女を買ってるのは、しなやかな身体と表現力、それにバネの強さなの。」
秋子は、瑠璃は新体操に必要な要素を、既に兼ね備えているから、と熱く説得を重ねた。
その前に瑠璃は、バレーボール部の見学をして来ていた。
中学校の先輩が見学に来た瑠璃に気付き、声をかけて来た。
「バレーボール部に入るでしょう?また一緒に頑張ろうよ。」
先輩は嬉しそうに誘ってくれたが、瑠璃は正直違和感を感じていた。
今や、地区では負け知らずの強豪として知られるようになった、稜星館高校バレーボール部は、レギュラー争いも熾烈で、足の引っ張り合いや、ライバルを蹴落とすための、醜い策略が横行しているらしい。
練習がハードなのは一向に構わない瑠璃だが、争いは嫌いでそれで迷っていた。
というのも、思いもよらないクラブの顧問の先生に、やってみないかと誘われた。
ずっと固辞していた瑠璃だったが、「見学するだけでもいいからいらっしゃい」と、半ば強引に引っ張って来られ、初めてそのスポーツを目の当たりに見る事になってしまった。
そういうスポーツがある事は、何となく知ってはいたが、実際にどういうふうにするのかまでは、全く知らなかった。
『新体操』という名前だという事さえ、先生の口から初めて知った。
「ほら!ちょっと手具を扱ってごらんなさい。」
瑠璃を誘って連れて来た、新体操部顧問の山崎秋子が、ニッコリと微笑みながら、フラフープのようなものを手渡した。
それを握らされても、どう扱っていいものかわからないし、瑠璃は戸惑った目で秋子の顔を見た。
瑠璃の戸惑いをすぐに察した秋子は、近くの部員に声をかけて、もう一つ同じものを持って来させた。
「こうやるのよ」
秋子は、そう言うと手にした輪っかを体の前や横で廻して見せる。
まるで、自分の体の一部のように、手や肩や背中を転げ回るそれは、優雅で力強く、しなやかで美しかった。
瑠璃は、自分にこんな事が出来るのだろうかと思ったが、思わず真似をしてみていた。
カツン…カツン…と、手具が床に落ちる音がする。
やはり、全くやった事がないのだから、そうそう上手くいくはずもなく、瑠璃は『ふぅ…』と息を吐いた。
「すぐに出来るようになるわ。手具の扱いは慣れだからね。私が貴女を買ってるのは、しなやかな身体と表現力、それにバネの強さなの。」
秋子は、瑠璃は新体操に必要な要素を、既に兼ね備えているから、と熱く説得を重ねた。
その前に瑠璃は、バレーボール部の見学をして来ていた。
中学校の先輩が見学に来た瑠璃に気付き、声をかけて来た。
「バレーボール部に入るでしょう?また一緒に頑張ろうよ。」
先輩は嬉しそうに誘ってくれたが、瑠璃は正直違和感を感じていた。
今や、地区では負け知らずの強豪として知られるようになった、稜星館高校バレーボール部は、レギュラー争いも熾烈で、足の引っ張り合いや、ライバルを蹴落とすための、醜い策略が横行しているらしい。
練習がハードなのは一向に構わない瑠璃だが、争いは嫌いでそれで迷っていた。
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