五色の炎?
夫が帰ると、彼に椅子を勧め、私はその正面に座った。
「話って?」
夫はおびえている。しかし、私とは全く種類の違うおびえだ。早い話が、離婚とか、そういうやつ。
「まず、今から私が話すことを、全部信じてくれるっ、て約束して」
夫は黙って頷く。
私は、炎の話を、全て夫に話す。伝説、梁の死、私を取り巻く、黄と青の火の玉。
夫は、悲しそうな顔で私を見る。
「おねがい信じて」
夫は、悲しげに頷く。駄目だ。やっぱり信じてくれない。
「なぁ」
病院行こう。明日。おれ、会社休むよ。
やっぱり、駄目みたいだった。
いや、ただ、私がおかしいだけなのだろうか?火の玉は、私を見下ろして、私をせせら笑っているように見える。
これは、私の、妄想の産物なのだろうか?だとしたら、梁は?彼の死は?どうやって説明がつくだろう?
「そんな顔しないで」
私は夫をじっ、と見つめる。
「ごめん。おれ、君に苦労をかけすぎちゃったかな?君も働いているのに、君にばっかり、家のことを任せて」
「そうじゃないの」
「ごめん」
彼は、私と話をしてはくれなかった。心を失った、私だった物体に向かって、話しかけているみたいだった。だけど、私は心を失ってなんかいない。少なくとも、そう自覚している。
炎は存在する。ほらだって、ちゃんとにここにある。
「ねぇ、信じてくれるって、言ったじゃない」
「うん」
ついに夫は涙をこぼした。夫の涙など、今まで、一度か二度しか見たことがない。
駄目だ。まるで、平行線だ。私は激しく混乱する。私が正しいのか、夫が正しいのかさえ判然としなくなる。
本当は、私はずっと幻覚を見てきたのだろうか???
「明日、病院行こう」
今の私にできることはただひとつ。
「わかった」
と言うことだけ。
精神病院は初めてではない。以前、不眠になったとき、市販薬がまるで効かなかったので、その時に、薬局代わりにちょこっと利用したことがある。
病院が処方した薬で、症状はあっけなく改善し、私は、もう、ここに来ることはあるまい、と思っていた。
「どうしました?」
医師に聞かれ、私は何も言うことができず、じっと固まる。
「幻覚があるみたいなんです」
代わりに答えたのは夫だった。
「赤と、黄色の火の玉がある、て言うんです」
青だよ。言いそうになり、私はハッ、として、口を塞ぐ。そんなことを言っても、この場では、全くもって仕方のない事だ。
「話って?」
夫はおびえている。しかし、私とは全く種類の違うおびえだ。早い話が、離婚とか、そういうやつ。
「まず、今から私が話すことを、全部信じてくれるっ、て約束して」
夫は黙って頷く。
私は、炎の話を、全て夫に話す。伝説、梁の死、私を取り巻く、黄と青の火の玉。
夫は、悲しそうな顔で私を見る。
「おねがい信じて」
夫は、悲しげに頷く。駄目だ。やっぱり信じてくれない。
「なぁ」
病院行こう。明日。おれ、会社休むよ。
やっぱり、駄目みたいだった。
いや、ただ、私がおかしいだけなのだろうか?火の玉は、私を見下ろして、私をせせら笑っているように見える。
これは、私の、妄想の産物なのだろうか?だとしたら、梁は?彼の死は?どうやって説明がつくだろう?
「そんな顔しないで」
私は夫をじっ、と見つめる。
「ごめん。おれ、君に苦労をかけすぎちゃったかな?君も働いているのに、君にばっかり、家のことを任せて」
「そうじゃないの」
「ごめん」
彼は、私と話をしてはくれなかった。心を失った、私だった物体に向かって、話しかけているみたいだった。だけど、私は心を失ってなんかいない。少なくとも、そう自覚している。
炎は存在する。ほらだって、ちゃんとにここにある。
「ねぇ、信じてくれるって、言ったじゃない」
「うん」
ついに夫は涙をこぼした。夫の涙など、今まで、一度か二度しか見たことがない。
駄目だ。まるで、平行線だ。私は激しく混乱する。私が正しいのか、夫が正しいのかさえ判然としなくなる。
本当は、私はずっと幻覚を見てきたのだろうか???
「明日、病院行こう」
今の私にできることはただひとつ。
「わかった」
と言うことだけ。
精神病院は初めてではない。以前、不眠になったとき、市販薬がまるで効かなかったので、その時に、薬局代わりにちょこっと利用したことがある。
病院が処方した薬で、症状はあっけなく改善し、私は、もう、ここに来ることはあるまい、と思っていた。
「どうしました?」
医師に聞かれ、私は何も言うことができず、じっと固まる。
「幻覚があるみたいなんです」
代わりに答えたのは夫だった。
「赤と、黄色の火の玉がある、て言うんです」
青だよ。言いそうになり、私はハッ、として、口を塞ぐ。そんなことを言っても、この場では、全くもって仕方のない事だ。
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