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落花流水、22話。

[361]  夢の字  2008-07-04投稿

 溜息混じりに答えた少女に睨みを効かせると彼女は眉をしかめ、

「だってそうでしょ。私は主に君の観測に因って成り立っている訳だし……ひょっとして、幽霊とか苦手?」
「デメリットが有るんじゃないか、って言ってるんだ、俺は」

 古今東西、怪談話は数有れど。そのどれを見ても、幽霊やら何やらに取り付かれた者の末路は惨憺たるものばかりだ。それが我が身に降り懸かる可能性があるとなれば、心配にもなる。基本的に俺は、厄介ごとに関わりたくはないのだ。
 俺の言いたいことを理解したのか、ああ、と少女が頷く。そして視線を逸らして中空で固定し、顎に指を当てて何やら思案し始めた。……何か有るのか、その反応は。

「……特には無い、けど。私を悪いように扱わなければ」
「……それはなんだ。今の待遇では不満だとでも言いたいのか?」
「違うよ。ああ、正確には私の力を、かな。異形は、人の世の規範からずれた存在だから。それを悪用すれば、人の世の規範からずれたヒトたちがそれを糾しに来る」
「……?」
「ユーザー。異能を手に入れたばかりに、人の世から外れた異物(ヒト)たち。彼等は、異物によって歪められたモノを正す事を存在理由にしているから」


 特異能力者(ファンクションユーザー)。魔術師(プログラマ)。或いは異形と契約した契約者(エミュレータ)。総じて能力者(ユーザー)と呼ばれる彼等は、同類が人の世を乱すことを許さないらしい。

「……デメリットには変わりないな。仕事がしにくくなる」
「かも、ね。心配することはないと思うけど」

 でもやっぱり、君のやっていることはヒトゴロシなんだよと、少女は小さく呟いた。けれど俺はそれに気付かない。


 ずっと、気付けないで、いた。

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