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年下の彼

[782]  マリリン  2008-07-04投稿
「僕は、君としか純粋な結婚ができないと思うんだ…」哲也のその言葉は、理子の心にある種、不思議な響きをもってなだれ込んできた。それは感激という簡単な言葉で片付けられないものだった。
「僕は、とてもクールな男なんだ。氷のような冷たい心をもってる。
でも、心の一番奥深い核のような部分だけは、暖かくて、今まで誰も踏み込んだことのない場所なんだ…… でも君は、その氷を溶かして、奥の核まで入り込んできた最初の女性だ」そう言葉を続けた哲也の顔は、緊張で青ざめ、身体は小刻みに震えていた。

それは、彼の理子への精一杯のプロポーズの言葉だったのだろう。

理子は、年下の彼からの突然のプロポーズに驚きを隠せなかった。と同時に、喜び、不安、気怠さ、物悲しさ… その刹那、 いろいろな感情が彼女の脳裏を嵐のように去来した。

まだ先延ばしにしてもよかったはずの運命の選択… これから先の人生を決定する大きな選択を迫られた時、人間はある種、恐怖に近いものを感じるのかもしれなかった。

男と女は、一体どういう時に、あるいはどういう理由で、結婚を決意するのだろう?理子には、それが、まださっぱりわからなかった。

だが、哲也の言葉は、不思議なニュアンスと力を持って、彼女の何かを確かに鷲掴みにし、揺さぶっていた。
続く

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