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星の蒼さは 90

[522]  金太郎  2008-07-05投稿
突然光を失った目の前の黒いWW。

ハルは訳がわからなかった。

紅蓮に耀いていた両腕の光が、振り下ろされた時にはきれいさっぱり無くなっていたのだ。

双方訳がわからんといった感じで見つめ合い、その後、光と共に推進力まで失ったのか、黒いWWは徐々に重力の影響を受け始めた。

「…あ!」

咄嗟に手を伸ばしたが間に合わず、光を消して真夜中の暗闇に姿を溶かした黒いWWは破壊し尽くされたニューヨークの残骸めがけて墜ちていった。

が、黒い機体は風のように現れた日本製WWがすれ違いにさらっていった。

日本製WWはこちらを見、しばらくの後、西の彼方に消えていった。

繰り返すならば、訳がわからなかった。

そもそも東京でアキと出逢い、TheGodOfDayの攻撃を受けたその日から訳がわからなかったような

ただ、今目先の事を考えるならば一つ。

「……勝った」

月軍は総大将を失いながらも未だ戦闘を継続しながら西へ撤退していく。

「勝った。勝ったんだ!やった!勝ったァ!」

戦場のど真ん中でハルは歓喜した。

「アキ!勝ったぞ!わかるか?アキ!」

呆れているのか、疲れているのか、後部座席のアキは一言もしゃべらなかった。

「アキ!……アキ、勝ったぞ?」

さすがに一人大騒ぎするのもイタくなってきて、ハルは振り向いた。

アキは、涙の代わりに血を流し、美しい肌を真っ青にして、ぐったりとシートに寄り掛かっていた。






「全軍戦線を維持しつつロサンゼルスへ退却。遅れんな」

てきぱきと指示を与えつつ、二ノ宮は腕に抱えているルシファーの中のアポロに話し掛けた。

「気分はどうスか」

憎まれ口も叩かないアポロは一言ポツリといった。

「悪くない」

「そうスか」

「ギンジ」

「何スか」

「…悔しいよ」

憎しみが消え、心にポッカリと空いた穴からは止めどなく感情が結露して滴っていく。

少し間を置いて、二ノ宮はあえて素っ気なく言った。

「そうスね」

二十五歳の自分から見てもガキ。

こんなガキにこれから自分達大人がさせようとしている数々の酷いこと、惨いこと。

かつての親友達は自分を軽蔑するだろう。

二年間見ていない、否、見ることが出来ない胸の内ポケットの中の身分証明書のメモ欄に貼ってある一枚のプリクラ写真を、やはり、見ることが出来なくて、手で軽く押さえて苦笑した。

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