Mind Adventure 28
「なんかさ……薄気味悪いよねぇ?ここ………」
戦闘の時とはまた違った様子で周りに神経を遣いながら、妖需が言う。
きー――――っ!
甲高い小動物のような声が、見計らったみたいに辺りに響いた。
静寂の中にこだまし、陰欝な空気がより一層増す。
後ろで妖需が立ち止まる気配がした。この程度の事で怖がるタマでもないはずなのだが。
不思議に思って振り返ると、蒼白で奮えている妖需が目に映った。
「おい………?」
意識をはっきりさせようとして、肩を揺すってみたが、妖需は力無く座り込んだきり、まるで反応が無い。
「おい、妖需……」
ふいに、苦痛で淀んだ瞳が、ディルを捉えた。
何かを訴えるように、こちらを見上げ、口を開いたその刹那。
「ぁ………っ」
何かに反応するように、体を強張らせ、獣のような呻き声を上げる。
「あぁあ゙ぁ゙ぁ゙あっ…!」
額には油汗が浮かび、腕や体ははっきり分かる程に震えている。
その肩に触れようとした時、初めて。
体が少しも動かせない事に気付いた。
背後に、人が立つ気配がした。
視線が粘ついて、気持ちわるい。気分が悪いから?これはただの汗?
全てが、重苦しい。
ディルは、まだ後ろの人物に気付いていないようだ。
(早く…早く………)
知らせないと。
ぎしぎしと、音がしそうなほどに固まりきった体に鞭打って、口を開く。
だが、阻まれた。【音】によって。
白衣の――
あれは、ここの科学者だろう。
フィレーネも、きっとあれのせいで、身動きが取れないに違いない。
もう、手遅れかもしれない。
薄暗いのでよく見えないが、心なしかディルの目の焦点が合っていないような気さえする。
白衣のポケットに、手が滑り込み―――\r
「うああ゙ぁあぁぁ゙あ゙ぁ゙あ゙あ…………っ!!!」
頭が割れたかと思う程の頭痛と吐き気に襲われ、意識が遠退く。
視界が白く、寸断された。
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