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Mind Adventure 29

[460]  籬 規那  2008-07-08投稿

近くで、何か音がしたかもしれない。

わからない。

頭が割れそうだ。船酔いに似ているかもしれない。



目の前に誰かが立った、かもしれない。

わからない。

頭が――――………






「これを飲め。即効性だから、はやく効くはずだ。」


口の中に苦みが広がり、すぐに沢山の水を流し込まれた。

少し噎せながら、妖需にも同じようにしている、相手を観察する。




黒い、法衣。黒ってなんだよ黒って。変態か?変態なのかあいつ?


体も思考もまだ思うようには動かないが、本当に薬の効きが早いらしく、"彼"が敵でないのは何と無く判った。




涙と汗でひどい顔をした妖需が、横にされて身じろぎをする。


「ひどいな………暫く動けないだろう。この娘は、幻獣か?」


「………?」

こいつは何を言っているんだろう。


ゲンジュウ?って、幻獣の事か?

魔物や動物の元になった、太古の民。

高い知能を持ち、高い魔力を持ち、しかしそれに溺れて世界が二つに別れた、という神話付きの?



「あんた……頭打ったのか?病院行った方がいいぞ」

「信じる信じないは自由だが、お前達にあの音波が効いたという事実は揺るがんぞ。」


「音波ぁ?」

言っている事が無茶苦茶過ぎる。
妖需なんか、魔法も人並み以下だし、一番ヒトらしい奴だと思うのだが。


「………私が気付いたのは船にいた時―――調度、この街から8キロ位の地点でした。これは、いつから?」

妖需がけだるそうに体を起こし、張りの無い声で尋ねた。


「この街では、常に大型の物が作動している。家畜にも多少影響があるらしい。」


そいつの声は、どこまでも低く、落ち着いた無機質な声で、敵ではないだろうとは思いながらも、体の緊張を解く事ができなかった。



「私も此処にはうんざりしていてな。今なら出してやる。無論、仲間もだ。」

信用しろと?馬鹿げてる。


ディルがそう思ったのに気付いたのか、【彼】はおもむろに法衣のフードを持ち上げた。

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