携帯小説!(PC版)

痛みの色

[398]  アイ  2008-07-09投稿
この痛みを何の色にたとえよう。
赤、赤、赤。
針で指を突き刺したみたいに、小さな血の玉が、じわりと心の表面に浮かび上がって。
青、青、青。
降り続く雨の中、ずぶ濡れで、差し伸べられる傘もなく、たった一人で立ち尽くして。
黒、黒、黒。
そう、それは、本当にただ闇で。
世界の非情なのに慣れた。哀しみの色を何度も何度も見てきた。
痛みは痛みを通り越して、もうどんなに痛くても悲しくても、涙は出てこなくなった。
代わりに優しくされた時にだけ、それは流れた。
日だまりは温かくて恐ろしい。いつか、誰かの手でそこから押し出されるのが、怖かった。

絶対幸福など存在しないと知っていた。
だから。
私は、痛みの色を覚えておこう。
きれいな赤も、澄んだ青も、麗しき黒も。
全部全部、心にとらえて、離さない。
再来する痛みに備えるために。
何よりも、自分を痛みから守るために。

もう二度と誰かの優しさに、涙を流さなくて済むように。
私は、痛みの色を忘れない。

忘れない。

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