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Killing Night Freaks/Chap.1-2

[350]  夢の字  2008-07-10投稿

 深夜1時。僕が歩く住宅地にも明かりの消えた家が多くなって来た。健全な人間はこの時間にはもう眠るのが普通なのだろう。眠っていないのは残業を終えて帰宅したばかりのサラリーマンとか、友人と会話しているうちにすっかり遅くなってしまった女子高生とか、大体そんなところだろう。僕みたいに、何かを探してさ迷うことだけを目的をしている人間なんてそうそう居るもんじゃない。ただでさえ夜は危ないと言うのに最近は通り魔も多いらしいし。だから暗く沈んだ道路には誰も居ない。それは住宅地を抜けても、代わらなかった。

 住宅地を抜ければ、視線の先に学校が有る。当然ながら校門は閉まっており、中に入ることは出来ない。だと言うのに、

「……あれ?」

 人影が有った。閉ざされた校門の向こう、明かり一つ無い校庭に。その人影は真っ直ぐ、校舎の方に向かって歩いている。

 時間が時間なだけに、忘れ物を取りに来たというわけではないだろう。そもそもが門を乗り越えなければ入れないのだし、掛かる手間を考えると素直に明日まで待っていたほうがいい。そんなに大事なものなのか……或いは、彼こそが僕が追い求めていた“特別”なのか……。

 逡巡は無い。校門から真っ直ぐ離れて距離をとる。校門の高さはニメートル弱、飛び越えられない高さじゃ無い――!

 短く息を吐いて気合いを入れると、大地を蹴って走り出した。踏み切り、校門の上部に手をかける。両手で身体を持ち上げ、勢いあまって向こう側に転がり落ちる。膝を打った。痛い。

「擦りむいてないと良いけど」

 ひとりごち、確認した膝には目立った外傷は無い。痛みも徐々に引いてきたし、これからの事になんら支障はないだろう。膝に付いた土を払って立ち上がり、校庭を見る。そこにはさっきの人影はもう無い。恐らくは校舎の中に入っていってしまったのだろう。

 夜の校舎は、遠目で見ても不気味だ。無骨な外観が夜の暗闇と相俟って闇に聳える古城のような印象を与える。中には数多くの化け物達が待ち構えて居る感覚。この、得体の知れない化け物の城に、彼は、入っていったのか。

 身体が小さく震える。でもそれは恐怖じゃない。高揚だ。今まで過ごして来た退屈な日々を打破することが出来るかもしれない、という期待に胸がうち震えている。

 僕は深呼吸すると、先ほど人影が消えていった生徒玄関に、その足を向けた。

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