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奈央と出会えたから。<183>

[644]  麻呂  2008-07-15投稿
『あまり遅くなったら、母さん心配するぜ。』



『うん。』



聖人は、あたしを家の前まで送ってくれた。



結局、もう一度今来た道を引き返す事になっちゃった。



家の前まで来た時、聖人はもう一度優しくキスをしてくれた。



『じゃあな。お母さんによろしく。』



そう言うと、聖人は小走りに去って行った。



聖人の姿が見えなくなると、あたしも家の中へ入った。





『お母さん。』



さっき帰って来たばかりの母は、テーブルの上にブッシュ・ド・ノエルを乗せて、



その上のキャンドルに火を点けるのを、あたしの為に待っていてくれた。



『奈央。お友達、みんないい子達ね。』


母が、外からリビングに入ったばかりのあたしに向かってそう言った。



『うん。みんなとてもいい人達なんだ。』



『‥‥母さん、奈央に謝らなければならないわね。』



『えっ?!何で?!』



『母さんは、いつも奈央を信じているけど、最近は忙しくてあなたとゆっくり話す機会が全然無かったわね‥‥‥。

彼‥‥聖人君。

なかなかの好青年ね。

礼儀正しい子は、母さん好きよ。

母さん彼の事、誤解してたわ。

奈央、ごめんね。』


母はあたしに謝った。



『お母さん、あたしはもう全然気にしてないよ。』



分かってくれたら、それでいいんだ。





シュッ――



母はマッチを擦って、キャンドルに火を点けた。



『奈央。聖人君て、なかなかハンサムよね。』



点けたばかりのキャンドルの灯りをじっと見つめながら、母が言った。



『うん。そうよ。カッコイイんだから。』



思わず得意気にそう答えたあたし。





『奈央。今からは母さんと奈央の2人だけのクリスマスよ。』





そう――



小さい頃は毎年、クリスマスを母と2人だけで過ごしていたんだっけ。



母は、それを今も覚えていてくれたんだ。



『メリークリスマス!!』



カチャン――



母とあたしはグラスを合わせて乾杯をした。

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