人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-12]
― 恐ろしくその場に不似合いな男である。
山男はにかっといたずらっぽい笑顔を浮かべると、己の背後を親指で指して言った。
「疲れただろ?ここめっちゃ山奥にあるからな。この俺ですら、登るのに苦労するぜ。まぁ立ち話もなんだからよ、とりあえず中に入れ。あ、そうだ自己紹介がまだだったな。俺は龍太郎だ。よろしくな」
― この龍太郎とかいう男、案外お喋りであることがたった今判明した。
依代は未だに身構えながらも、丁寧に言った。
「………依代です。よろしくお願いします」
「おぅ、よろしくな。さぁ入れ。ばぁさんが菓子やらなんやら用意して、さっきから待ってんだ。早く会ってやれ」
「は、はい」
「うっし、じゃあついて来い。中は広いからな、迷うなよ?」
そう言って龍太郎は歩き出した。
悪いひではないらしい、と依代は思いながら後を追った。
中は想像以上に広く、美しかった。山の水を引いているのだろう。庭の中を、小川がさらさらと何事か囁きながら、くねくねと曲がりくねって流れている。遠くの方で獅子おどしが鳴っていた。植えてある木々や草花も素晴らしかった。石垣に沿って桜、梅、桃、橘、椿、樫、杉、松、紅葉、銀杏、椎、楠木、サルスベリ、芙蓉などの大木が、それぞれ枝を伸ばして繁っていたり、中には花を咲かしているものもあった。奥の方には竹林なんかもあり、贅沢である。頭上も緑なら、足元も緑である。オオバコ、ホオズキ、ナデシコ、萩、クチナシ、キョウチクトウ、カンゾウ、ツユクサなどが風に揺れていた。
山男はにかっといたずらっぽい笑顔を浮かべると、己の背後を親指で指して言った。
「疲れただろ?ここめっちゃ山奥にあるからな。この俺ですら、登るのに苦労するぜ。まぁ立ち話もなんだからよ、とりあえず中に入れ。あ、そうだ自己紹介がまだだったな。俺は龍太郎だ。よろしくな」
― この龍太郎とかいう男、案外お喋りであることがたった今判明した。
依代は未だに身構えながらも、丁寧に言った。
「………依代です。よろしくお願いします」
「おぅ、よろしくな。さぁ入れ。ばぁさんが菓子やらなんやら用意して、さっきから待ってんだ。早く会ってやれ」
「は、はい」
「うっし、じゃあついて来い。中は広いからな、迷うなよ?」
そう言って龍太郎は歩き出した。
悪いひではないらしい、と依代は思いながら後を追った。
中は想像以上に広く、美しかった。山の水を引いているのだろう。庭の中を、小川がさらさらと何事か囁きながら、くねくねと曲がりくねって流れている。遠くの方で獅子おどしが鳴っていた。植えてある木々や草花も素晴らしかった。石垣に沿って桜、梅、桃、橘、椿、樫、杉、松、紅葉、銀杏、椎、楠木、サルスベリ、芙蓉などの大木が、それぞれ枝を伸ばして繁っていたり、中には花を咲かしているものもあった。奥の方には竹林なんかもあり、贅沢である。頭上も緑なら、足元も緑である。オオバコ、ホオズキ、ナデシコ、萩、クチナシ、キョウチクトウ、カンゾウ、ツユクサなどが風に揺れていた。
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