[短編]輝
ベットにごろりと横になった時、ふと目に入ったのは中学生の時のアルバムだった。
何気なく開いてみると、ある写真を見つけた。
全員で撮った集合写真。
その中に彼を見つけた。
黒ぶちメガネをかけているのに、どこかやんちゃな男の子をイメージさせる姿。
どうしてだろうか、その写真からほこりくさいにおいと同時に、彼の、男の子の匂いがしたみたい。
その匂いに少しドキドキしてるのは、きのなんかじゃないよね…。
今でも覚えているんだ。
隣に座る、彼の匂いを。
なんとも言えない、汗くさい、だけどくさくない男の子匂いだった。
隣に座る、彼の体温を。
もう一生感じることのできない彼の体温。
今頃彼は、どうしてるだろうか。
小学生の時も、中学生の時も、‘席替え'という行事が大嫌いだった。
残り物の、1番ボロくなった机に椅子。
隣になってしまった男子の嫌味な声。
周りの女子からの反感の声。
全部全部嫌だった。
劣等感と孤独感におそわれる。
だから席替えなんて大嫌いだったんだからね..
それは、今も変わらない。
だけどあの時だけは違った気がした。
あなたの隣になって、少し、ほんの少しだけど変われたよ?
ポツ..
アルバムの彼の写真に、小さな水溜まりができた。
ほんの、ほんの一瞬の出来事だったけど、私には何十年、何百年の出来事だったように思えた。
アルバムの中の彼を見つめながら、ゆっくり、ゆっくりとかれのことを思い出した。
つづく…
*輝…‘ひかる’と読みます!
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