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桜坂高校九話

[662]  天竜雅  2008-07-23投稿
「あ、そこの花屋で俺が花を買ってくるよ」

そう山田が言うと同時に皆の金を持って走り出した。

「……大丈夫なのか?」

浅川はぽつりと言った。しかし、皆もその事を考えているだろう…なぜなら…

「山田君、どんな花を選ぶんですかね……」

やや不安そうに室長が俺を見ながら言ったが、そんな事を言われても俺が分かるはずもなく、ただ不安だけが頭を支配していた。

「おまたせ!!ばっちり買ってきたぞ!」

「………何の花を買ったんだ?」

山田は自信ありげに笑った。

「お楽しみだよ」

そう言って綺麗にラッピングされたブーケの花を見ようとしていた俺達は山田の手で阻まれたのであった。




夜桜の家



「コホッコホッ…ごめんね、心配かけて…お見舞いなんてよかったのに………」

夜桜は申し訳なさそうに上半身を布団から起こした。

「夜桜、これ…部屋にでも飾ってよ」

山田はそう言うと、さっき買った花を夜桜に渡した。

「コホッコホッ…ありがとう…山田く……」

ぴたりと夜桜が手を止めて、花を凝視していた。俺達は急いで山田が渡した花を見た…その花は…

「き……菊の…花…?」

やや青ざめた顔で室長が言った。

「……しかも、黒いリボンか……」

浅川は呆れたように言った。

「山田!お前なんて花を見舞いに持って来たんだ!!」

「何だか良さそうだったから」

「………この馬鹿!!見舞いに仏様に供えるような花を持ってくる馬鹿がいるか!…いるな…馬鹿がここに……はぁ」

俺は溜め息をついた。そして夜桜に謝った。
その声に我に帰った夜桜は苦笑いをしながら花を受け取った。

そうして、見舞いと言う名の嫌がらせをして俺達は帰って行った………。


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