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エリザベスドール(1)

[769]  ぐうりんぼ  2008-07-23投稿
あれから数十年以上の月日が過ぎた。


バーソロン家の屋敷は既になく、夫妻の行方も分からない。

人形のエリザベスは今、L市内のA骨董屋の陳列台に飾られていた。

今となっては古い人形だが、不思議な事に年代的な古さを感じさせない雰囲気を漂わせている。

見た目は美しいけど…、

「ホント、でけぇ人形だ。売れねえし、邪魔でしょうがねえな」

店のマスターは陳列品の整理をしながらぼやく。

─いつまでも置いてもしょうがない。─

マスターは人形の処分を検討していた。

そんな時、人形の買い手が現われた。

17歳の学生…ルーク・ハリーである。

店を訪れたルークはエリザベス人形を買う事をマスターに言った。

「この人形を売ってくれませんか?」

「構わないけど、この人形の事…どこで知ったのかね?」

「ネットのサイトですよ。何十年の前に作られた人形なのに、未だに古さを感じさせない。
等身大の立派な人形…って写真付きで紹介されていたんです」

「ヘェ、この人形はそんなに有名だったのかァ。珍しいもんだ」


こうして、人形はルークの手に渡った。

マスターの親父には何の価値も無いエリザベス人形も、人形やフィギュア集めを趣味とするルークにとっては宝物である。

モノが大きいだけでなく、美しい表情をしているのだから。

その愛らしい姿にルークを虜にしてしまった。

人形はルークのベッド近くの椅子に置かれた。
(等身大だから、座らされたと言ってイイか?)

1人暮らしで彼女のいないルークにとってはエリザベスはまるで、恋人か妹みたいな存在。

毎日のように人形に話しかけたり、キスをしたりするのが日課となった。

ルークは段々と人形への思いが強くなってゆく。


つづく

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